第88話 悪役なら防衛戦を放棄する
翌日。
第三競技。
王都防衛模擬戦。
会場は。
王都の外に作られた巨大な演習区域だった。
「すごい……。」
リリアが周囲を見る。
城壁。
塔。
街並みを再現した魔法施設。
まるで本物の王都だった。
「今年の特別競技。」
魔法省職員が説明する。
「各学院は防衛側となります。」
「制限時間三時間。」
「魔物型魔法兵器から中央塔を守ってください。」
空中へ映像が浮かぶ。
大量の魔物。
巨大な獣。
飛行型。
地上型。
「……。」
面倒だ。
防衛。
つまり。
責任重大。
失敗すれば注目される。
成功しても注目される。
「なら。」
悪役なら。
放棄する。
「俺は。」
「後方にいる。」
リリアが固まる。
「え?」
「前線には出ない。」
「男爵様……。」
セレナは腕を組む。
「また始まりましたね。」
「何がだ。」
「悪役っぽい行動です。」
「違う。」
「違いません。」
しかし。
俺は本気だった。
目立ちたくない。
これが一番いい。
「分かりました。」
セレナが頷く。
「では。」
「私たちが前線を担当します。」
「……。」
少し意外だった。
「いいのか。」
「はい。」
セレナは真剣な顔で答える。
「あなたが後方にいるなら。」
「私たちはその分、守ればいい。」
「……。」
リリアも笑う。
「男爵様。」
「なんだ。」
「信じていますから。」
「?」
「後ろにいてください。」
「私たちが頑張ります。」
「……。」
その言葉。
少しだけ。
引っ掛かった。
開始。
鐘が鳴る。
魔法で作られた魔物群が動き出す。
「来ます!」
「迎撃開始!」
各学院が一斉に魔法を放つ。
炎。
氷。
雷。
巨大な魔法が空を飛ぶ。
俺は後方の塔へ向かう。
「ここなら。」
静かだ。
誰にも見られない。
最高の場所。
……のはずだった。
『緊急事態』
突然。
通信魔法が響く。
『北門突破』
『第二防衛線崩壊』
「……。」
早い。
想定以上だ。
さらに。
『中央塔へ大型魔物接近』
ざわめき。
各学院の代表者が動く。
「まずい!」
「間に合わない!」
「……。」
俺は塔の上から見る。
巨大な魔物。
他の生徒たちでは止められない。
「……。」
面倒だ。
本当に。
こういう時だけ。
身体が勝手に動く。
俺は塔から飛び降りた。
「男爵様!?」
リリアの声。
セレナも驚く。
「まさか……。」
地面へ着地。
巨大魔物の前へ立つ。
「……。」
悪役なら。
ここで見捨てるべきだった。
でも。
「邪魔だ。」
俺は手を向ける。
「消えろ。」
次の瞬間。
王都防衛模擬戦の空に。
巨大な魔力の光が走った。
第88話を読んでいただきありがとうございます!
第三競技、王都防衛模擬戦が開始しました。
後方にいるつもりだったアルベルトですが、危機を前にまたしても動いてしまいます。
次回、王都全体が注目する戦いが始まります!




