第87話 悪役なら祝勝会を台無しにする
第二競技終了。
結果発表。
巨大な掲示板へ順位が表示された。
『第一位』
『王立魔法学院』
『アルベルト・フォン・グランディア』
会場中が沸く。
「また一位!」
「二競技連続!」
「今年の優勝候補だ!」
「……。」
最悪だ。
目立っている。
俺は静かにため息を吐いた。
「男爵様。」
リリアが笑う。
「本当にすごいですね。」
「違う。」
「え?」
「勝っただけだ。」
「それがすごいんです。」
セレナも隣で頷く。
「今回は。」
「本当にそう思います。」
「……。」
珍しい。
この女が素直に認めるとは。
その夜。
第二競技終了を祝うため。
各学院合同の祝勝会が開かれた。
大食堂。
豪華な料理。
音楽。
多くの生徒たち。
「今日くらいは楽しみましょう!」
リリアが笑う。
「男爵様も。」
「断る。」
「即答ですね……。」
王女も苦笑する。
「少しぐらい休まれてはいかがですか?」
「必要ない。」
悪役なら。
祝勝会など壊す。
皆が喜んでいるところへ水を差す。
それが悪役だ。
俺は立ち上がる。
「……。」
「男爵様?」
リリアが首を傾げる。
俺は壇上へ向かう。
会場が静まる。
「アルベルト?」
「何をする気だ?」
エリオットも興味深そうに見る。
俺はマイク代わりの魔道具を手に取る。
「……。」
そして。
「くだらない。」
会場が凍る。
「!」
「え?」
「男爵様……?」
よし。
これだ。
「勝利程度で騒ぐな。」
「二回勝っただけだ。」
「浮かれるほどのことではない。」
静寂。
生徒たちの表情が変わる。
完璧だ。
嫌われる。
そう思った。
しかし。
「……。」
エリオットが笑った。
「やはり。」
「?」
「あなたらしい。」
「何がだ。」
「勝った時ほど。」
「自分を戒める。」
「違う。」
セレナも静かに頷く。
「確かに。」
「浮かれるなという意味では正しいですね。」
「違う。」
リリアは。
少し嬉しそうだった。
「男爵様。」
「なんだ。」
「次も頑張ろうってことですよね。」
「違う。」
「はい!」
元気な返事。
違う。
そうじゃない。
その時。
会場の隅から。
拍手が聞こえた。
パチ。
パチ。
一人の少女。
北部学院の代表だった。
「……。」
「あなた。」
少女は笑う。
「やっぱり面白いですね。」
「何がだ。」
「普通。」
「優勝した人は褒められたくなるものです。」
「でも。」
「あなたは自分を褒めない。」
「……。」
また。
勝手に解釈される。
すると。
次々と拍手が広がった。
「次も頑張ろう!」
「まだ終わってない!」
「その通りだ!」
「……。」
違う。
俺はただ。
祝勝会を壊したかっただけだ。
その時。
魔法省職員が会場へ入ってきた。
「皆様。」
空気が変わる。
「明日の第三競技について発表があります。」
全員が注目する。
「第三競技。」
「今年特別に追加された競技です。」
職員は一枚の紙を見る。
「内容は――」
一拍。
「王都防衛模擬戦。」
「……。」
ざわめき。
「防衛?」
「戦闘競技か?」
「まさか。」
職員は続ける。
「各学院代表者は。」
「仮想魔物群から王都を守っていただきます。」
「そして。」
「最高得点者には。」
「王国騎士団から特別称号が授与されます。」
「……。」
嫌な予感がした。
称号。
つまり。
目立つ。
絶対に避けたい。
俺は静かに思う。
「第三競技。」
「棄権しよう。」
しかし。
翌日。
その競技で。
王都全体を巻き込む事件が起こることを。
まだ誰も知らなかった。
第87話を読んでいただきありがとうございます!
第二競技終了後、祝勝会と第三競技の発表回でした。
アルベルトは悪役らしく空気を壊そうとしますが、またしても周囲には前向きな言葉として受け取られてしまいます。
そして次回からは王都防衛模擬戦編へ突入します!




