第86話 悪役なら最後の獲物を奪う
最深部。
巨大な扉の前。
俺たちは到着した。
「……。」
しかし。
そこには先客がいた。
「遅かったな。」
中央魔法学院の代表。
エリオット。
そして。
その後ろには魔導核が浮かんでいた。
金色の光。
これが第二競技の目的。
「魔導核。」
セレナが呟く。
「先に取られましたね。」
「……。」
なら。
奪う。
悪役なら。
他人の勝利を横取りする。
「渡せ。」
俺はエリオットへ言う。
「え?」
「それを寄越せ。」
周囲が静まる。
リリアが驚く。
「男爵様!?」
セレナも目を見開く。
「まさか。」
「本当に奪うつもりですか。」
「ああ。」
これでいい。
嫌われる。
エリオットは少しだけ笑った。
「やはり。」
「あなたは面白い人ですね。」
「……。」
「普通なら。」
エリオットは魔導核を見る。
「勝利を譲るとか。」
「綺麗な言葉を言うでしょう。」
「ですが。」
こちらを見る。
「あなたは欲しいものを欲しいと言う。」
「違う。」
「なら。」
エリオットは魔導核を持ち上げた。
「取りに来てください。」
「……。」
挑発。
なら。
受ける。
俺が一歩踏み出した瞬間。
「待ってください。」
リリアが前へ出た。
「?」
「今回は。」
「私たちも戦わせてください。」
「……。」
セレナも頷く。
「第二競技です。」
「団体戦ですから。」
「あなた一人の勝負ではありません。」
「……。」
まただ。
だが。
今回は。
悪くないと思った。
「分かった。」
二人が少し驚く。
「本当に?」
「ああ。」
「任せる。」
リリアが笑顔になる。
「はい!」
セレナも構える。
「では。」
「勝ちましょう。」
エリオットも微笑む。
「良いですね。」
「これで本当の団体戦になります。」
中央学院の仲間たちも並ぶ。
「行くぞ!」
戦闘開始。
リリアの光魔法が飛ぶ。
セレナの氷魔法が道を作る。
中央学院も連携する。
激しい魔法戦。
だが。
俺は見ていた。
相手の動き。
魔力の流れ。
隙。
「……。」
そこだ。
一瞬。
俺は走る。
「!?」
エリオットが気付く。
しかし。
遅い。
俺は魔導核へ手を伸ばす。
その瞬間。
エリオットも笑った。
「やはり。」
「最後はあなたですね。」
「……。」
魔導核へ触れる。
光が広がる。
『取得者』
『アルベルト・フォン・グランディア』
『第二競技終了』
静寂。
そして。
歓声。
「アルベルトだ!」
「また勝った!」
「最強だ!」
「……。」
違う。
奪っただけだ。
悪役らしい。
完璧だ。
しかし。
エリオットは笑っていた。
「素晴らしい。」
「?」
「最後まで。」
「仲間を信じていましたね。」
「違う。」
「最初に一人で行こうとしたあなたが。」
「最後は仲間へ任せた。」
「それだけで十分です。」
「……。」
意味が分からない。
リリアが笑う。
「男爵様。」
「何だ。」
「少しずつ変わっていますよ。」
「違う。」
セレナも小さく頷く。
「本人だけ気付いていないようですが。」
「……。」
こうして。
第二競技。
優勝。
アルベルトチーム。
本人は。
最後に勝利を奪った悪役のつもりだった。
しかし。
周囲が見ていたのは。
仲間と共に勝ち取った英雄の姿だった。
第86話を読んでいただきありがとうございます!
第二競技、ついに決着です!
アルベルトは「勝利を奪っただけ」と考えていますが、周囲から見れば仲間と協力して最後まで戦い抜いた姿として映りました。
王都合同魔法演習も折り返し地点へ。
次の競技では、さらに大きな試練が待っています。
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