第81話 悪役なら仲間を置いて先へ進む
第二競技。
遺跡探索。
開始地点には各学院の代表者たちが集まっていた。
「それでは。」
審判が手を上げる。
「第二競技――開始!」
巨大な門が開く。
古代遺跡。
苔むした石壁。
未知の魔法装置。
その奥に魔導核が眠っている。
「行きましょう!」
リリアが声を上げる。
「男爵様!」
「……。」
俺は歩き出す。
ただし。
一人で。
「?」
リリアとセレナが顔を見合わせる。
「男爵様?」
「先に行く。」
「え?」
「遅い奴を待つ理由はない。」
よし。
悪役らしい。
仲間を置いていく。
最低だ。
これなら嫌われる。
俺は遺跡の奥へ進む。
「……。」
しかし。
数秒後。
後ろから足音。
「待ってください!」
リリアだった。
「なぜ来る。」
「当然です。」
「チームですから。」
「……。」
セレナも続く。
「勝手に一人で行動しないでください。」
「危険です。」
「危険?」
「あなたが?」
「違います。」
セレナはため息を吐く。
「周囲がです。」
「?」
「あなたは自分が強いから忘れているのでしょうが。」
「他の人はそうではありません。」
「……。」
意味が分からない。
その時。
ガコン。
足元の石が沈んだ。
「!」
壁が開く。
大量の矢が飛び出した。
「危ない!」
リリアが叫ぶ。
しかし。
俺は動かない。
矢は。
全部。
俺の前で止まった。
「……。」
魔力障壁。
自動で発動した。
「やはり。」
セレナが目を細める。
「罠も問題ありませんね。」
「違う。」
俺は矢を払い落とす。
「勝手に止まった。」
「それを言う人は初めて見ました。」
セレナが呆れる。
その時。
奥から音が響く。
ゴゴゴゴ……。
巨大な石像が動き出した。
「古代守護者……。」
セレナが呟く。
「遺跡の防衛魔法です。」
「強いんですか?」
リリアが尋ねる。
「通常なら。」
「代表三人でも苦戦します。」
「……。」
なら。
倒す。
俺は一歩前へ出る。
「下がれ。」
「男爵様?」
「俺がやる。」
悪役なら。
全部一人で片付ける。
仲間など必要ない。
そう思った。
しかし。
「駄目です。」
リリアが前へ出る。
「……。」
「私たちは仲間です。」
「一人で全部背負わないでください。」
「……。」
セレナも隣へ並ぶ。
「同感です。」
「あなたは強い。」
「ですが。」
「だからといって。」
「全部一人でやる必要はありません。」
「……。」
初めてだった。
力を求められるのではなく。
頼ることを求められた。
「……。」
面倒だ。
だが。
「分かった。」
二人が少し驚く。
「え?」
「一緒にやる。」
リリアが笑顔になる。
「はい!」
セレナも小さく頷いた。
「任せてください。」
石像が咆哮する。
そして。
三人の戦いが始まった。
第81話を読んでいただきありがとうございます!
第二競技、遺跡探索編がスタートしました!
今回はアルベルトが初めて「仲間と一緒に戦う」ことを選ぶ回になりました。
本人はまだ悪役のつもりですが、少しずつ周囲との関係にも変化が生まれています。
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