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第8話 視察という名の圧力

第8話です。


屋敷の外でも勘違いは止まりません。


悪役を目指すアルベルトですが、領民からの信頼は本人の知らないところでどんどん積み重なっていきます。

 騎士団まで味方になった。


 もう屋敷の中では何をやっても駄目だ。


「なら。」


 外へ行くしかない。


 領地を視察し、住民に圧力をかける。


 悪役貴族らしく威圧してやれば、さすがに恐れられるはずだ。


「レオン。」


「はい。」


「護衛を十人連れてこい。」


「十人、ですか。」


「ああ。」


 わざと大人数だ。


 武装した騎士を連れて歩けば、誰だって威圧感を覚える。


「かしこまりました。」


 一時間後。


 完全武装した騎士十人を従え、俺は街へ出た。


 石畳の通りを歩くと、人々の視線が一斉に集まる。


「あ……。」


「男爵様だ。」


「騎士団まで……。」


 小声が聞こえる。


 よし。


 怖がっている。


 俺はゆっくり商店街を歩いた。


 すると、一軒の果物屋の前で立ち止まる。


「お前。」


「は、はい!」


 店主が慌てて頭を下げた。


「売れているようだな。」


「お、おかげさまで……。」


「全部買う。」


「……え?」


「今並んでいる果物を全部だ。」


 店主は目を丸くした。


 もちろん食べるためじゃない。


 全部買ってしまえば、今日は誰も買えなくなる。


 嫌がらせとしては十分だ。


「全部男爵家へ運べ。」


「か、かしこまりました!」


 店主は大慌てで商品を箱へ詰め始めた。


 周囲の住民もざわついている。


 いいぞ。


 ようやく悪役らしくなってきた。


 屋敷へ戻る途中、レオンが尋ねた。


「坊ちゃま。」


「なんだ。」


「これほど大量の果物をどうなさるのでしょう。」


「好きに処分しろ。」


「承知しました。」


 それだけ言ってレオンは黙った。


 翌朝。


 朝食を終えた俺の元へ、執事がやってきた。


「坊ちゃま。」


「今度は何だ。」


「昨日の果物ですが、孤児院や貧しい家庭へ配らせていただきました。」


「…………。」


「皆、大変喜んでおりました。」


「誰が配れと言った。」


「坊ちゃまのお考えかと。」


「違う。」


「市場で売れ残れば傷んでしまいますので。」


「…………。」


 そこへエレナまで笑顔で加わる。


「孤児院の子どもたちは、人生で初めてあんなに甘い果物を食べたそうです。」


「……。」


「『男爵様ありがとう』と何度もお礼を言っていました。」


 違う。


 俺は営業妨害をしたかっただけだ。


 感謝されるためじゃない。


 するとレオンが胸に手を当てる。


「坊ちゃま。」


「なんだ。」


「困っている者へ何も言わず手を差し伸べる……。」


「違う。」


「これほど器の大きな領主に仕えられることを誇りに思います。」


「だから違う。」


 まただ。


 また全部勘違いされた。


 俺は窓の外を見る。


 広場では子どもたちが果物を片手に笑っていた。


「……なんでこうなる。」


 誰も答えない。


 いや、答えられない。


 本人以外、全員が「男爵様は照れているだけ」だと思っているのだから。

第8話を読んでいただきありがとうございます!


今回は主人公が商人へ圧力をかけたつもりが、またしても領民から感謝される結果になりました。


「続きが気になる!」「面白かった!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると嬉しいです!


感想やレビューもお待ちしております!


次回もよろしくお願いいたします!

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