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第79話 悪役なら勝利を譲る

 第一競技終了。


 結果発表。


 巨大な魔法掲示板へ順位が映し出される。


『第一位』


『アルベルト・フォン・グランディア』


『第二位』


『中央魔法学院』


『第三位』


『西方魔法学院』


 会場は大きな歓声に包まれていた。


「すごい!」


「圧倒的だ!」


「最後の魔法なんだよ!」


「……。」


 最悪だ。


 目立ちすぎた。


 俺は静かにため息を吐く。


「男爵様。」


 リリアが近付いてくる。


「優勝ですね!」


「違う。」


「え?」


「ただ魔獣を消しただけだ。」


「それが凄いんですよ!」


 王女も微笑む。


「王都の代表者たちも驚いていました。」


「……。」


 周囲を見る。


 確かに。


 他学院の代表たちがこちらを見ている。


 警戒。


 尊敬。


 興味。


 全部混ざった視線。


「なら。」


 次は。


 目立たない。


 悪役なら。


 勝利を他人へ譲る。


 表彰式。


 壇上へ呼ばれる。


「第一競技優勝者。」


「アルベルト・フォン・グランディア男爵。」


 拍手。


 俺は壇上へ上がる。


 魔導結晶が入った優勝杯。


 それを受け取る。


 そして。


「いらん。」


 会場が静まった。


「……え?」


 審判が固まる。


「この勝利は。」


 俺は後ろを見る。


 北部学院の少女。


 そして。


 助けようと動いた生徒たち。


「そいつらのものだ。」


「え?」


「俺は必要ない。」


 優勝杯を少女へ差し出す。


「受け取れ。」


「……。」


 少女は目を見開く。


「私が?」


「ああ。」


「でも。」


「あなたが一番点数を取ったんですよ?」


「興味ない。」


 沈黙。


 そして。


 少女の目に涙が浮かんだ。


「……ありがとうございます。」


 深く頭を下げる。


「一生忘れません。」


「違う。」


 会場から。


 大きな拍手が起こった。


「まただ……。」


「優勝まで譲ったぞ。」


「どこまで……。」


 エリオットは静かに笑う。


「やはり。」


「彼は面白いですね。」


 セレナは腕を組む。


「……。」


「理解できません。」


「ですが。」


 一瞬だけ。


 優しい目になる。


「嫌いではありません。」


「……。」


 リリアと王女は。


 少しだけ複雑そうだった。


「男爵様。」


「どうしました?」


「誰かに譲るのは素敵ですけど。」


 リリアが小さく笑う。


「少し寂しいです。」


「?」


「せっかく一位だったのに。」


「……。」


 意味が分からない。


「勝ったのはお前たちだ。」


 そう言うと。


 リリアは嬉しそうに笑った。


「そういうところです。」


「何がだ。」


 もちろん。


 俺には分からなかった。


 そして。


 その日の夜。


 王都中で一つの噂が広がる。


『王都合同魔法演習に現れた男爵は――』


『力だけではなく、名誉すら他人へ譲る英雄だった』


 本人だけが。


 その評価を知らなかった。

第79話を読んでいただきありがとうございます!


第一競技終了後のお話でした。


アルベルトは目立たないために勝利を譲ったつもりですが、結果的にはさらに大きな評価を得ることになってしまいました。


王都での噂はますます広がり、次の競技へ向けて各学院の思惑も動き始めます。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価、感想、レビューで応援していただけると、とても励みになります!

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