第78話 悪役なら魔獣を一撃で倒す
演習場。
巨大な魔法獣が目の前に立っている。
全身は黒い魔力で覆われ。
鋭い爪。
巨大な牙。
普通の生徒なら。
一人では到底相手にできない存在だった。
「逃げろ!」
「代表者でも危険だ!」
「援護を!」
各学院の生徒たちが叫ぶ。
しかし。
俺は動かない。
「……。」
面倒だ。
目立つ。
だが。
ここで放置すると。
さっきの少女が危ない。
「……。」
仕方ない。
一瞬で終わらせる。
俺は右手を上げた。
「魔法を使うのか?」
「どんな魔法だ?」
観客席も注目する。
セレナは目を細めた。
「……。」
「何をするつもりですか。」
エリオットも静かに見守る。
「アルベルト。」
「本気ですね。」
俺は魔力を集める。
周囲の空気が震える。
「……。」
大きすぎる。
少し減らす。
さらに減らす。
「これくらいでいい。」
手を前へ出す。
「消えろ。」
放った魔法は。
ただの一撃だった。
しかし。
瞬間。
巨大な光が演習場を包む。
ドォォォン!!
魔法獣は。
一瞬で消滅した。
静寂。
誰も声を出せない。
「……。」
「……。」
「……。」
審判すら固まっていた。
『魔獣型魔法障害』
『撃破を確認』
『アルベルト・フォン・グランディア』
『追加得点――』
一拍。
『五十点』
会場が爆発したように騒がしくなる。
「五十点!?」
「一撃!?」
「何をしたんだ!?」
順位表が変化する。
『第一位』
『アルベルト・フォン・グランディア』
「……。」
最悪だ。
一位になった。
目立つ。
完全に失敗だ。
「男爵様!」
リリアが通信越しに叫ぶ。
「すごいです!」
「違う。」
「やっぱり!」
王女も微笑んでいる。
「本気を出せば。」
「誰にも届かないほどの力なのですね。」
「違う。」
セレナは。
しばらく何も言わなかった。
そして。
「……。」
「あなた。」
「本当に何者なんですか。」
小さく呟く。
「普通の男爵ではありませんよね。」
「男爵だ。」
「そういう意味ではありません。」
珍しく。
困った顔だった。
その時。
北部学院の少女が近付いてきた。
「ありがとうございました。」
「……。」
「また助けてもらいました。」
「違う。」
「違います。」
少女は笑う。
「でも。」
「私は見ました。」
真っ直ぐな目。
「誰よりも早く。」
「誰よりも迷わず。」
「助けに来てくれました。」
「……。」
言葉が出なかった。
その瞬間。
『競技終了まで残り一分』
放送が響く。
全員が慌てて動き出す。
しかし。
もう結果は決まっていた。
第一競技。
首位。
アルベルト・フォン・グランディア。
本人の意思とは関係なく。
王都合同魔法演習で。
最初の伝説が生まれた。
第78話を読んでいただきありがとうございます!
第一競技、ついに決着です。
目立たないように行動していたアルベルトですが、最後は誰かを助けるために力を使い、結果的に全学院へ実力を知られることになりました。
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次回もよろしくお願いいたします!




