第77話 悪役なら順位を下げる
魔導結晶争奪戦。
残り時間。
あと一時間。
「……。」
現在順位。
第三位。
最悪だ。
目立っている。
「なら。」
順位を下げる。
簡単だ。
結晶を誰かへ渡せばいい。
そうすれば。
俺は目立たない。
橋の下。
俺は持っている結晶を見る。
青。
赤。
合計十六点。
「……。」
近くにいたら適当に渡すか。
その時。
「いたぞ!」
声が響いた。
振り返る。
数人の生徒。
中央学院の代表だった。
「アルベルト・フォン・グランディア!」
「やっぱりここにいた!」
「……。」
面倒だ。
「結晶を渡してくれ。」
代表の一人が言う。
「俺たちではなく。」
「他の学院に渡すつもりなら。」
「それは困る。」
「?」
「何の話だ。」
三人は警戒した顔をする。
「とぼけるな。」
「君は。」
「わざと順位を落とそうとしているだろう。」
「……。」
なぜ分かった。
「さっきから。」
「君の動きは不自然だ。」
「結晶を集められる実力があるのに。」
「戦闘を避けている。」
「そして。」
「順位を気にしているように見える。」
「……。」
鋭い。
こいつら。
ちゃんと見ている。
「だから。」
「俺たちが止める。」
「……。」
なら。
悪役らしく。
倒す。
俺は構える。
だが。
「待って。」
後ろから声。
北部学院の少女だった。
「彼は違います。」
「……。」
「アルベルトさんは。」
少女は三人を見る。
「私の結晶を奪いませんでした。」
「むしろ。」
「助けてくれました。」
「!」
三人が驚く。
「本当に?」
「はい。」
少女は頷く。
「だから。」
「戦う必要はありません。」
「……。」
余計なことを。
その時。
通信魔法が響いた。
『残り三十分』
『現在順位を発表します』
空中に巨大な文字が浮かぶ。
『第一位』
『中央魔法学院』
『第二位』
『西方魔法学院』
『第三位』
『アルベルト・フォン・グランディア』
「また三位……。」
俺はため息を吐く。
その瞬間。
空から巨大な影が落ちてきた。
ドンッ!
地面が揺れる。
「!?」
全員が身構える。
現れたのは。
魔法で作られた巨大な獣。
「特別障害?」
「聞いてないぞ!」
代表者たちが叫ぶ。
審判の声が響く。
『緊急ルール追加』
『魔獣型魔法障害を撃破した学院には追加得点』
ざわめき。
「倒せば逆転できる!」
「行くぞ!」
各学院が動き出す。
だが。
魔獣は。
一直線に。
一番近くにいた少女へ向かった。
「危ない!」
北部学院の少女が動けない。
その瞬間。
「……。」
まただ。
身体が動いた。
俺は地面を蹴る。
「男爵様!」
遠くで。
セレナの声が響いた。
「また……。」
「助けに行ってる。」
そして。
俺は魔獣の前へ立つ。
「邪魔だ。」
一言。
魔獣へ手を向ける。
「消えろ。」
次の瞬間。
巨大な魔力が。
演習場全体を震わせた。
第77話を読んでいただきありがとうございます!
今回は順位を下げたいアルベルトと、思惑とは逆に注目されていく流れを描きました。
そして第一競技終盤、新たな障害が発生。
アルベルトは目立ちたくないのに、また大きな行動を取ってしまいます。
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