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第76話 悪役なら弱った相手を追い詰める

 橋の下。


 目の前には一人の少女。


 北部魔法学院の代表者。


 制服は汚れ。


 息は乱れている。


 明らかに戦闘直後だった。


「……。」


 これは好都合だ。


 弱った相手。


 今なら簡単に倒せる。


 悪役なら。


 容赦なく追い詰める。


「立て。」


「……。」


 少女の表情が強張る。


「やっぱり……。」


「あなたなんですね。」


「?」


「交流祭で話題になった。」


「アルベルト・フォン・グランディア。」


「……。」


 また名前を知られている。


「なら。」


 俺は一歩近付く。


「結晶を置いていけ。」


「!」


 少女は腕輪を見る。


 そこには赤い結晶が三つ。


 合計十五点。


「嫌です。」


 即答だった。


「これは。」


「私が仲間のために集めたものです。」


「……。」


 仲間。


 なら。


 奪えばいい。


「弱いな。」


 わざと冷たく言う。


「そんな状態で守れると思うのか。」


 少女の顔が曇る。


 よし。


 これで嫌われる。


「……。」


 少女は悔しそうに俯く。


「その通りです。」


「私は弱いです。」


「でも。」


 顔を上げる。


「だからって。」


「諦める理由にはなりません。」


「……。」


 真っ直ぐな目だった。


 その瞬間。


 茂みの奥から音がした。


 ザッ。


「見つけたぞ!」


 三人の生徒が現れる。


 別学院の代表者たち。


「北部学院の結晶。」


「もらうぞ。」


 少女の表情が変わる。


「……。」


 囲まれた。


 なら。


 悪役として。


 ここで見捨てる。


 俺は関係ない。


 そう言えばいい。


 だが。


「……。」


 面倒だ。


 俺のいる場所で騒ぐな。


 俺は立ち上がる。


「帰れ。」


 三人の生徒が止まる。


「は?」


「誰に言ってるんだ?」


「お前一人で何が――」


 次の瞬間。


 俺は地面へ魔力を流した。


 ドンッ!


 衝撃波が広がる。


 三人の足元だけが崩れた。


「なっ!?」


「立てない!?」


「……。」


 一瞬。


 それだけ。


「結晶は持っていけ。」


 少女を見る。


「え?」


「仲間のところへ戻れ。」


「……。」


 少女は目を見開く。


「どうして……。」


「お前らが騒ぐと。」


 俺は周囲を見る。


「うるさい。」


「……。」


 少女は小さく笑った。


「やっぱり。」


「噂とは違いますね。」


「?」


「怖い人だと思っていました。」


「そうだ。」


「でも。」


 少女は結晶を握る。


「優しい人なんですね。」


「違う。」


 即答する。


「違います。」


 少女は笑った。


「そういうところですよ。」


「……。」


 意味が分からない。


 その時。


 俺の腕輪が光る。


『現在順位』


『アルベルト・フォン・グランディア』


『16点』


『第3位』


「……。」


 なんだこれは。


 取った覚えがない。


 周囲の結晶が。


 勝手に集まっただけだ。


 しかし。


 順位表示は。


 全学院へ公開される。


 中央では。


「第3位!?」


「アルベルトだ!」


「いつ集めたんだ!?」


 セレナが驚いた顔をする。


「……。」


「まさか。」


 エリオットも笑う。


「彼。」


「隠れているつもりですね。」


「ですが。」


「結果的に誰より効率よく動いている。」


「違う。」


 橋の下。


 俺は空を見上げた。


「目立ってしまった。」


 悪役として。


 一番避けたいことだった。

第76話を読んでいただきありがとうございます!


今回は新たな学院代表との出会いでした。


アルベルトは相手を追い詰めるつもりでしたが、結果的には困っていた相手を助けることになってしまいます。


さらに本人の知らないところで順位まで上昇。


第一競技はまだまだ波乱が続きます!


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