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第75話 悪役なら一番安全な場所へ逃げる

 翌日。


 合同魔法演習当日。


 巨大な演習場には各学院の代表者たちが集められていた。


「これより第一競技。」


「魔導結晶争奪戦を開始します!」


 審判の声が響く。


 各代表者は転移魔法陣の上へ立った。


「配置は完全ランダムです。」


「それでは。」


「転移開始!」


 眩い光が全員を包み込む。


 ――――。


 次の瞬間。


 俺は森の中へ立っていた。


「……。」


 木しかない。


 静かだ。


「好都合だ。」


 百点の虹色結晶。


 あんな目立つ物を狙えば確実に囲まれる。


 悪役なら。


 安全な場所で終わるまで待つ。


 それが一番だ。


 俺は森の奥へ歩いていく。


 すると。


 草むらの中に青い結晶が落ちていた。


「……。」


 一点。


 興味ない。


 そのまま通り過ぎる。


 しかし。


 足が当たった。


 コロン。


 結晶が転がる。


 ピカッ。


 俺の腕輪が光った。


『1点 獲得』


「……。」


 勝手に入った。


 いらん。


 さらに歩く。


「ギャアアア!」


 遠くで戦闘音が聞こえる。


 爆発。


 魔法。


 悲鳴。


「……。」


 近寄らん。


 俺は反対方向へ歩いた。


 数分後。


 川へ出た。


 橋の下なら隠れられる。


「ここでいい。」


 橋の下へ降りる。


 ひんやりしている。


 静かだ。


 昼寝でも――。


 コツン。


「?」


 頭へ何か当たった。


 見上げる。


 岩の隙間に。


 赤い結晶が挟まっていた。


「……。」


 五点。


 どうでもいい。


 取ろうとしたわけではない。


 ただ。


 邪魔だった。


 指で押す。


 コロン。


 また腕輪が光る。


『5点 獲得』


「……。」


 勝手に落ちた。


 俺は悪くない。


 その頃。


 演習場中央。


「虹色結晶出現!」


 審判の声が響いた。


 ドォォォン!


 巨大な光柱が空へ伸びる。


「出た!」


「中央だ!」


「急げ!」


 各学院の代表者たちが一斉に走り出した。


 セレナも。


「行きます!」


 エリオットと共に中央へ向かう。


 リリアも王女も。


「男爵様は!?」


「きっともう中央ですね!」


「急ぎましょう!」


 誰もがそう思っていた。


 一方。


 本人は。


 橋の下で座っていた。


「静かだ。」


 最高だった。


 その時。


 ガサガサ。


 茂みが揺れる。


「……。」


 誰かいる。


 少女が一人。


 ボロボロになりながら飛び出してきた。


 制服を見る。


 北部魔法学院。


「はぁ……はぁ……。」


 少女は俺を見るなり顔色を変えた。


「なっ……!」


「交流祭の……!」


 アルベルト・フォン・グランディア。


 その名を聞いただけで警戒していた相手が。


 目の前にいた。

第75話を読んでいただきありがとうございます!


ついに第一競技がスタートしました!


目立ちたくないアルベルトは安全な場所へ逃げ込みますが、なぜか結晶だけは勝手に集まってしまいます。


そして最後には、新たな学院の代表者との遭遇。


ここから演習はさらに大きく動き始めます!


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