第74話 悪役ならルール説明を無視する
開会式が終わると。
代表者たちはそのまま中央訓練場へ案内された。
円形の闘技場。
中央には巨大な魔法陣が刻まれている。
「これより。」
魔法省の職員が前へ出る。
「合同魔法演習のルール説明を行います。」
各学院の代表者が静かに耳を傾ける。
セレナも真剣な表情だった。
「第一競技は――」
「魔導結晶争奪戦。」
空中へ魔法が映し出される。
森。
川。
岩山。
広大な演習場の立体地図だった。
「競技時間は三時間。」
「各地点へ配置された魔導結晶を集め、その総得点を競います。」
「なお。」
「他学院との戦闘も認めます。」
周囲がざわつく。
「ついに来たか。」
「本番だな。」
「負けられない。」
説明は続く。
「魔導結晶は。」
「青が一点。」
「赤が五点。」
「金が二十点。」
さらに。
「代表者が戦闘不能となった学院は、その時点で失格となります。」
真剣な空気。
「……。」
長い。
悪役なら。
こんな説明は聞かない。
俺は近くの壁へ寄り掛かった。
腕を組み。
目を閉じる。
「……。」
「またですか。」
セレナが呆れた声を出した。
「ルールくらい聞いてください。」
「いらん。」
「いります。」
「聞かん。」
「聞いてください。」
「断る。」
二人のやり取りに。
周囲の代表者たちが苦笑する。
「仲いいな。」
「夫婦みたい。」
「違う。」
「違います!」
俺とセレナの声が重なった。
一瞬。
目が合う。
「……。」
「……。」
先に目を逸らしたのはセレナだった。
「と、とにかく。」
「話を聞いてください。」
「嫌だ。」
「どうしてですか!」
「面倒だからだ。」
「……。」
セレナは額を押さえる。
「あなた。」
「本当に代表ですか。」
「そうだ。」
「信じられません。」
その時。
エリオットが笑顔で近付いてきた。
「副会長。」
「私が説明します。」
「お願いします。」
セレナは即答した。
エリオットは俺を見る。
「アルベルト男爵。」
「結晶は点数が違います。」
「そして。」
「代表者は倒されると失格。」
「以上です。」
「そうか。」
「理解しましたか?」
「ああ。」
「終わりだな。」
「はい。」
エリオットは満足そうに頷いた。
「やはり理解が早いですね。」
「違う。」
ただ。
二つしか覚えていない。
結晶を拾う。
死なない。
それだけだ。
その時だった。
「最後に。」
魔法省職員が声を上げる。
「今年は特別ルールがあります。」
全員が職員を見る。
「競技開始十分後。」
「演習場中央へ。」
「特別目標。」
「虹色の魔導結晶が出現します。」
会場がどよめく。
「虹色?」
「初めて聞いたぞ。」
「点数は?」
職員は静かに答えた。
「百点です。」
ざわっ――。
空気が一変した。
「百点!?」
「そんなの絶対狙うだろ!」
「今年は荒れるぞ!」
セレナの表情も険しくなる。
「中央は激戦になりますね。」
エリオットも静かに頷く。
「ええ。」
「代表者同士が集まるでしょう。」
全員の視線が。
自然と俺へ向いた。
交流祭の英雄。
最も警戒すべき相手。
そんな目だった。
「……。」
俺は一つだけ思う。
百点。
目立つ。
つまり。
絶対に取りに行かない。
悪役は。
地味であるべきだ。
第74話を読んでいただきありがとうございます!
ついに第一競技のルールが明らかになりました。
そして今年限定の「虹色の魔導結晶」の存在により、各学院の思惑が大きく動き始めます。
アルベルトは目立たないために狙わないつもりですが、果たしてその思惑通りにいくのでしょうか。
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