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第72話 悪役なら開会式を欠席する

王都中央魔法学院。


 巨大演習場。


 円形に造られた観客席には各学院の生徒が集まり、その中央には広大な訓練場が広がっていた。


「すごい……。」


「こんな広い訓練場初めて見た。」


「全部魔法で補強されてるらしいぞ。」


 地方学院の生徒たちは感嘆の声を漏らしていた。


「代表者はこちらへ。」


 エリオットが案内する。


 演習場の最前列。


 各学院の代表だけが並ぶ席だった。


「……。」


 面倒だ。


 悪役なら。


 開会式なんて出ない。


 俺は静かに列を離れた。


 人気のない廊下へ向かう。


「よし。」


 このまま部屋へ戻れば——


「待ってください。」


「……。」


 後ろから聞き慣れた声。


 振り返る。


 セレナだった。


「また逃げるつもりですか。」


「違う。」


「ではどちらへ?」


「散歩だ。」


「開会式の直前ですよ。」


「だから散歩だ。」


 セレナは深いため息をついた。


「やっぱり。」


「信用できません。」


「……。」


 また言われた。


「戻ってください。」


「断る。」


「断れません。」


「断る。」


「規則です。」


「……。」


 また規則か。


 すると。


 セレナは腕を組んだ。


「では。」


「一つ質問します。」


「?」


「あなたは。」


「どうしてそんなに悪ぶるのですか?」


「……。」


 一瞬。


 言葉が止まる。


「悪ぶる?」


「はい。」


「周囲は皆あなたを慕っています。」


「それなのに。」


「あなたはいつも。」


「自分を悪く見せようとしているように見えます。」


「……。」


 鋭い。


 この女。


 初めてだ。


 ここまで見抜いてくる奴は。


「気のせいだ。」


「そうですか。」


 セレナはそれ以上追及しなかった。


「ですが。」


「あなたは。」


「本当は優しい人です。」


「違う。」


「そう言うと思いました。」


 少しだけ笑う。


「でも。」


「私は自分の目で見て判断します。」


「噂でも。」


「他人の評価でもありません。」


「……。」


 その言葉に。


 少しだけ意外だった。


 学院では。


 皆すぐ勘違いした。


 だが。


 この女は違う。


 自分で見て。


 自分で考える。


「……。」


 少しだけ。


 面白い。


「男爵様ー!」


 遠くからリリアの声が聞こえた。


「開会式始まりますよー!」


 王女も一緒だった。


「皆様お待ちです。」


「……。」


 俺は小さくため息をつく。


「行けばいいんだろ。」


「はい。」


 セレナは静かに頷く。


「ありがとうございます。」


「勘違いするな。」


「散歩は終わりだ。」


「ふふっ。」


 セレナは初めて。


 声を出して笑った。


「はい。」


「そういうことにしておきます。」


 こうして。


 アルベルトは結局開会式へ出席することになった。


 もちろん。


 本人は最後まで。


 悪役らしく欠席しようとしただけだと思っていた。

第72話を読んでいただきありがとうございます!


今回はアルベルトとセレナが少しだけ本音に近い会話をする回でした。


勘違いだけではなく、お互いを少しずつ理解し始める関係性も第三章の見どころとなっていきます。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価、感想、レビューで応援していただけると、とても励みになります!


次回はいよいよ合同魔法演習の開会式です!

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