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第63話 悪役なら宿屋で料理を横取りする

 王都への道中。


 馬車は宿場町へ到着した。


「ここで一時間ほど休憩します!」


 教師の声が響く。


 生徒たちは一斉に馬車を降りた。


「疲れたー!」


「お腹空いた!」


「……。」


 俺もゆっくり宿屋へ入る。


 木造の大きな建物。


 旅人たちで賑わっていた。


「男爵様!」


 リリアが嬉しそうに手を振る。


「こちら空いてます!」


「……。」


 向かいには王女も座っていた。


「どうぞ。」


「断る。」


「でも他に席が……。」


 見渡す。


 満席だった。


「……。」


 仕方なく座る。


「ご注文をどうぞ!」


 店員がやって来る。


「一番安い物。」


「かしこまりました!」


 数分後。


 料理が運ばれてきた。


 焼いた肉。


 スープ。


 パン。


「いただきます!」


 リリアと王女が笑顔で手を合わせる。


「……。」


 なら。


 悪役らしく。


 料理を横取りしよう。


 俺はリリアの皿へ手を伸ばした。


 肉を一切れ取る。


「…………。」


 静まり返る。


 よし。


 最低だ。


「男爵様。」


 リリアは嬉しそうに笑った。


「足りなかったんですね!」


「違う。」


「もっと食べてください!」


 皿ごと差し出してきた。


「いらん。」


「遠慮しないでください!」


「遠慮じゃない。」


 すると。


 王女まで皿を差し出した。


「こちらもどうぞ。」


「いらん。」


「男爵様は育ち盛りですから。」


「違う。」


 店員まで微笑んでいる。


「仲の良いご兄妹ですね。」


「違う。」


「恋人さんですか?」


 ブッ。


 リリアが水を吹きそうになる。


「ち、違います!」


 顔が真っ赤だった。


「ち、違いますから!」


 王女も少しだけ頬を赤らめる。


「そのような関係ではありません。」


「そうでしたか。」


 店員は笑って去っていく。


「……。」


 気まずい空気。


 よし。


 これなら少しは。


 そう思った、その時。


「男爵様。」


 リリアが小さな声で言った。


「さっきのお肉。」


「?」


「美味しかったですか?」


「……普通だ。」


「えへへ。」


 嬉しそうだった。


 王女も微笑む。


「では次は。」


「もっと美味しいお店をご案内します。」


「いらん。」


 その時だった。


 宿屋の外から。


「誰か助けてくれ!」


 大きな怒鳴り声が響いた。


 店内が一気に静まり返る。


「馬車が!」


「暴れてるぞ!」


「子供が!」


 その一言で。


 俺は立ち上がっていた。


「男爵様!」


 リリアの声も聞かず。


 俺は宿屋を飛び出した。

第63話を読んでいただきありがとうございます!


今回は旅の途中の宿場町での一幕でした。


そしてラストでは、新たなトラブルが発生します。次回、アルベルトはどう動くのでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価、感想で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします!

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