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第62話 悪役なら馬車で嫌がらせをする

馬車は王都へ向かって走っていた。


 ガタゴト。


 車輪が石畳を進む音だけが響く。


「……。」


 静かだ。


 向かいにはリリア。


 隣には王女。


 二人とも外を眺めている。


「男爵様。」


 リリアが嬉しそうに笑った。


「初めての遠出ですね!」


「そうか。」


「楽しみです!」


「俺は楽しくない。」


「ふふっ。」


 笑われた。


「……。」


 なら。


 悪役らしく嫌がらせをしよう。


 馬車の中なら逃げられない。


 まずは。


 窓を閉める。


 バタン。


「少し暗くなりましたね。」


 リリアは特に気にしていない。


 次に。


 カーテンまで閉める。


 シャッ。


 馬車の中は薄暗くなった。


「男爵様?」


 王女が首を傾げる。


「眠る。」


 短く答える。


「なるほど。」


 王女は微笑んだ。


「昨日まで交流祭でしたものね。」


「お疲れなんですね。」


 リリアも納得したように頷く。


「……。」


 違う。


 嫌がらせだ。


 さらに。


 俺は窓を少しだけ開けた。


 ビュオッ。


 風が吹き込む。


 紙が舞う。


「きゃっ。」


 リリアの髪が揺れた。


 よし。


 少し迷惑だ。


 しかし。


「涼しいですね!」


 笑顔だった。


「確かに。」


 王女も頷く。


「気持ちの良い風です。」


「……。」


 何なんだ。


 すると。


 馬車が大きく揺れた。


 ガタンッ!


「きゃっ!」


 リリアの身体が傾く。


 咄嗟に。


 俺は腕を伸ばした。


 ガシッ。


「大丈夫か。」


「は、はい……。」


 リリアは俺の腕を掴んだまま固まっていた。


「す、すみません。」


「座れ。」


「はい。」


 その様子を見た王女は。


 小さく微笑む。


「男爵様。」


「なんだ。」


「ありがとうございます。」


「違う。」


「反射でした。」


「……。」


 その一言に。


 リリアは少しだけ頬を赤くする。


「反射でも。」


 小さく呟く。


「助けてくれたのは男爵様です。」


「違う。」


 その時。


 馬車が止まった。


「?」


 御者が扉を叩く。


「皆様。」


「昼食の時間です。」


「近くの宿場町で休憩いたします。」


 王都まで。


 まだ半分ほど。


 馬車の旅は。


 まだ始まったばかりだった。

第62話を読んでいただきありがとうございます!


第三章では学院を飛び出し、旅の途中での出来事も描いていきます。


王都へ向かう道中でも、アルベルトの悪役計画は相変わらず思い通りには進みません。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価、感想で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします!

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