第61話 悪役なら王都へ行かない
王都合同魔法演習。
出発の日。
学院前には豪華な馬車が何台も並んでいた。
「皆さん!」
「忘れ物はありませんかー!」
教師たちが慌ただしく動いている。
「……。」
俺は学院の裏門に立っていた。
「行かん。」
王都。
面倒だ。
知らない人間ばかり。
知らない学院ばかり。
嫌われるには最高だが。
それ以上に面倒だった。
「ここで帰る。」
荷物を肩へ担ぐ。
その時だった。
「男爵様!」
聞き慣れた声。
「……。」
振り返る。
リリアだった。
息を切らしながら走ってくる。
「やっぱり!」
「なんだ。」
「こっちにいました!」
「帰る。」
「駄目です!」
即答だった。
「王都ですよ!」
「だからだ。」
「皆さん待ってます!」
「待たせろ。」
「駄目です!」
その時。
「男爵様。」
王女も静かに歩いてきた。
「学院長先生が。」
苦笑しながら言う。
「『アルベルト君は九割九分逃げる』と仰っていました。」
「余計なことを。」
「ですので。」
王女は一枚の紙を見せる。
「裏門も封鎖されています。」
「?」
振り返る。
本当に門が閉じられていた。
「……。」
学院長。
やりやがった。
「男爵様。」
リリアが笑う。
「正門へ行きましょう!」
「嫌だ。」
「行きます!」
腕を引っ張ろうとする。
「離せ。」
「嫌です!」
「……。」
結局。
三人で正門へ戻る。
すると。
「アルベルト君。」
学院長が笑顔で待っていた。
「逃げようとしましたね?」
「してない。」
「そうですか。」
学院長は頷く。
「では。」
一枚の紙を差し出す。
「こちらへどうぞ。」
「?」
『逃走防止誓約書』
「…………。」
「何だこれは。」
「念のためです。」
「いらん。」
「形式だけですので。」
「いらん。」
学院長は笑顔を崩さない。
「サインを。」
「断る。」
「では。」
学院長は馬車を見る。
「リリアさん。」
「はい!」
「王女殿下。」
「はい。」
「アルベルト君をお願いします。」
「お任せください!」
「承知しました。」
「……。」
両側を挟まれた。
「逃がしません!」
「王都へ参りましょう。」
「……。」
完全に包囲されている。
その様子を見たルークが腹を抱えて笑った。
「はははは!」
「アルベルト!」
「完全に連行じゃねぇか!」
「違う。」
「違わねぇよ!」
馬車へ乗り込む。
ガタン。
扉が閉まる。
窓の外では学院の生徒たちが手を振っていた。
「男爵様ー!」
「頑張ってください!」
「応援してます!」
「……。」
俺は静かに窓の外を見る。
「帰りたい。」
馬車がゆっくり動き出す。
こうして。
悪役になるための新たな舞台。
王都への旅が始まった。
第三章がスタートしました!
ついに舞台は学院から王都へ移ります。
新キャラクター、新たなライバル、そしてさらに大きな勘違い騒動が待ち受けています!
「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価、感想で応援していただけると励みになります!
これからもよろしくお願いいたします!




