第60話 悪役なら同行者なんて選ばない
教室。
同行者は一名。
その一言で空気が変わった。
「……。」
面倒だ。
一人選べば、もう一人が傷付く。
なら。
誰も選ばない。
それが一番だ。
「俺は。」
静かに立ち上がる。
「一人で行く。」
教室中が静まり返る。
「ですが。」
教師が困ったように笑う。
「同行者を選ぶ権利があります。」
「いらん。」
「誰とも行かん。」
そう言った瞬間だった。
「男爵様。」
リリアがゆっくり立ち上がる。
「はい。」
「私は。」
小さく笑う。
「男爵様が決めたことなら応援します。」
「……。」
「一人で行くと決めたなら。」
「私は待っています。」
「……そうか。」
すると。
王女も立ち上がった。
「私も同じです。」
「?」
「男爵様が選ばれた道なら。」
優しく微笑む。
「私は尊重いたします。」
「……。」
二人とも。
争わない。
昨日までなら。
少しくらい言い合っていただろう。
なのに。
「……。」
意味が分からん。
ルークが腕を組む。
「アルベルト。」
「なんだ。」
「お前。」
苦笑する。
「本当に罪な男だな。」
「意味が分からん。」
「分からねぇならいい。」
教室に笑いが広がる。
その時。
学院長が教室へ入ってきた。
「皆さん。」
静かな声だった。
「少しだけ時間をいただけますか。」
全員が席へ座る。
学院長は俺を見る。
「アルベルト君。」
「なんだ。」
「同行者ですが。」
「断る。」
「まだ話していません。」
「……。」
学院長は苦笑した。
「王都から追加の通達が届きました。」
一枚の紙を取り出す。
『同行者は代表者本人が現地到着後に決定してもよい』
教室がざわつく。
「現地で?」
「そんなのあり?」
「つまり。」
学院長が続ける。
「今ここで決める必要はありません。」
「……。」
助かった。
「良かったですね!」
リリアが笑う。
「まだ時間があります!」
「ええ。」
王女も穏やかに頷く。
「焦る必要はありませんね。」
「……。」
俺は一人。
心の中で思う。
その時も選ばない。
絶対にだ。
学院長は教室を見回し。
満足そうに頷いた。
「それでは。」
「交流祭も無事終了しました。」
「皆さん、お疲れ様でした。」
大きな拍手が響く。
窓の外では。
夕日が学院を赤く照らしていた。
転生してから。
初めての学院生活。
悪役になるための毎日は。
一度も思い通りにならなかった。
嫌われようとして。
褒められた。
突き放そうとして。
慕われた。
悪役を目指すほど。
周囲との距離は近付いていく。
「……。」
俺は小さく空を見上げる。
「次こそは。」
「絶対に悪役になってやる。」
その決意だけは。
最後まで変わらなかった。
だが。
教室のみんなは。
そんな俺の背中を見ながら。
誰もが同じことを思っていた。
やっぱり男爵様は優しい。
こうして。
学院での日々は幕を閉じる。
そして物語は――
王都編へと続いていく。
第二章「学園への招待」を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
交流祭を経て、アルベルトの評判は学院だけでなく他校にも広がり、新たな舞台である王都への招待を受けることになりました。
第三章では、さらに強力なライバルや新ヒロイン、新たな勘違い騒動が待ち受けています!
「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価、感想で応援していただけると、とても励みになります!
それでは第三章もよろしくお願いいたします!




