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第59話 悪役なら王都への招待を破り捨てる

交流祭終了後。


 教室。


 教師が一通の封筒を机へ置いた。


「アルベルト君。」


「王都から正式な招待状です。」


「……。」


 金色の封蝋。


 王家の紋章。


 見るからに重要そうだった。


「来月行われる王国合同魔法演習。」


「王国中の学院代表が集まります。」


「ぜひ参加してください。」


「断る。」


 教室が静まり返る。


「え?」


「行かん。」


 教師は苦笑した。


「ですが正式な招待です。」


「興味ない。」


 俺は封筒を持ち上げる。


「なら。」


 悪役らしく。


 王家の招待状を破り捨てよう。


 こんなことをすれば。


 不敬罪だ。


 嫌われるどころじゃ済まない。


 ビリッ。


 封筒を開こうとした、その時。


「男爵様!」


 リリアが慌てて止める。


「待ってください!」


「なんだ。」


「まだ読んでません!」


「読む必要ない。」


「あります!」


 王女も席を立った。


「男爵様。」


「せめて内容だけでも。」


「いらん。」


 俺は中身を取り出す。


 一枚の羊皮紙。


「破る。」


 そう言って両手を掛けた。


「アルベルト君!」


 教師まで青ざめる。


「それは!」


「待ってください!」


 その時だった。


 羊皮紙から。


 一枚の小さな紙が落ちた。


 ひらり。


 床へ落ちる。


「?」


 教師が拾い上げる。


「ああ。」


「こちらでしたか。」


「?」


「今年から。」


 教師は笑う。


「招待状とは別に。」


「参加者への交通費支給証明書も入っているんです。」


「…………。」


「もし破ってしまったら。」


 苦笑する。


「再発行が大変でした。」


「……。」


 しまった。


 俺はただ封を開けただけだった。


「男爵様!」


 リリアが胸へ手を当てる。


「良かったです……。」


「危なかったですね。」


 王女も安心したように微笑む。


「大切な書類でした。」


「違う。」


「男爵様は。」


 教師が頷く。


「中身を確認してから判断しようとされたんですね。」


「違う。」


「流石です。」


「違う。」


 教室中が拍手する。


「慎重だ!」


「男爵様らしい!」


「……。」


 もう何も言うまい。


 教師は改めて羊皮紙を開く。


「それでは読みます。」


『アルベルト・フォン・グランディア殿』


『貴殿を王国合同魔法演習へ正式に招待する』


『また、今年は特別演習として――』


 教師の表情が少し変わる。


「特別演習?」


「どうしたんですか?」


 ルークが尋ねる。


 教師はゆっくり続きを読む。


『各学院代表は、一名の同行者を選ぶことを許可する』


「えっ?」


 教室中がざわつく。


「同行者?」


「一人だけ?」


 その瞬間。


 リリアと王女の動きが止まる。


「……。」


「……。」


 二人は同時に。


 アルベルトを見た。


 もちろん。


 俺だけは。


「……一人で行けばいい。」


 本気でそう思っていた。

第59話を読んでいただきありがとうございます!


交流祭は終わりましたが、物語は新たな舞台へ向けて動き始めます。


そして招待状に書かれていた「同行者一名」という一文が、新たな波乱を呼びそうです。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると、とても励みになります!


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