第56話 悪役なら優勝者を馬鹿にする
宝探し大会が終わった。
優勝した後輩は、まだ周囲から祝福されている。
「おめでとう!」
「すごい!」
「優勝者だ!」
「……。」
俺はその様子を眺める。
なら。
優勝した奴を馬鹿にしよう。
悪役なら当然だ。
努力した者を嘲笑う。
最低だ。
俺は後輩の前へ立つ。
「男爵様!」
後輩が嬉しそうに頭を下げる。
「なんだ。」
「優勝できました!」
「そうか。」
「全部男爵様のおかげです!」
「違う。」
俺は小さく鼻で笑う。
「そんな程度で喜ぶな。」
「……。」
辺りが静まり返る。
よし。
今度こそだ。
「たかが交流祭の優勝。」
腕を組む。
「浮かれるな。」
「…………。」
後輩は俯く。
少し肩が震えていた。
よし。
泣くか。
嫌われる。
その時だった。
「はい!」
元気な返事が返ってきた。
「…………。」
顔を上げる。
後輩は笑っていた。
「男爵様の言う通りです!」
「?」
「僕!」
拳を握る。
「もっともっと強くなります!」
「違う。」
「交流祭だけで満足しません!」
「違う。」
「いつか!」
真っ直ぐ俺を見る。
「男爵様に追いつけるよう頑張ります!」
「違う。」
周囲の教師たちも頷いていた。
「さすが男爵様。」
「優勝して終わりじゃない、と。」
「最後まで指導されるなんて。」
「違う。」
リリアが目を輝かせる。
「男爵様。」
「後輩思いですね。」
「違う。」
王女も優しく微笑む。
「喜ぶだけでは成長できない。」
「そのことを教えられたのですね。」
「違う。」
ルークが後輩の肩を叩く。
「頑張れよ!」
「はい!」
「アルベルトに認められるの大変だからな!」
「はい!」
「違う。」
誰も聞いていない。
その時。
司会が再び壇上へ上がる。
「皆様!」
会場が静かになる。
「交流祭最後の催しをご案内します!」
ざわっ。
生徒たちがざわめく。
「今年は特別企画として――」
一拍置いて。
「学院代表と他校代表による合同演習を行います!」
「おおおお!」
歓声が響く。
「代表って誰だ?」
「うちの学院は?」
司会は笑顔で紙を開く。
「本学院代表は――」
嫌な予感がした。
「アルベルト・フォン・グランディア!」
「……。」
会場が大歓声に包まれる。
「やっぱり!」
「男爵様!」
「当然だ!」
俺は静かに空を見上げた。
「……帰りたい。」
第56話を読んでいただきありがとうございます!
今回は交流祭最後のイベントへ向けた繋ぎのお話でした。
悪役らしく後輩を馬鹿にしたつもりが、またしても「厳しくも優しい先輩」と勘違いされてしまいました。
そして次回からは、交流祭最大のイベントが始まります!
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