第54話 悪役なら他校の問題児を仲間にする
交流祭。
他校の生徒にまで好かれた。
「……。」
もう手遅れだ。
学院だけならまだしも。
他校にまで評判が広がっている。
「なら。」
悪名を広げる。
問題児と仲良くなればいい。
悪役には悪役らしい仲間が必要だ。
中央広場。
少し離れた場所で人だかりができていた。
「また始まった。」
「他校のあいつか。」
「教師でも止められないらしい。」
見ると。
一人の男子生徒が腕を組み、不機嫌そうに立っていた。
制服は他校。
周囲の生徒を睨みつけている。
「どけ。」
「近寄んな。」
「……。」
なるほど。
問題児だ。
俺はその前へ立った。
「おい。」
「……あ?」
鋭い視線が向く。
「お前。」
「なんだ。」
「気に入った。」
「……は?」
「俺の仲間になれ。」
一瞬で周囲が静まり返る。
「男爵様!」
「何言ってるの!?」
リリアと王女も駆け寄ってくる。
「男爵様!」
「その方は……!」
「知ってる。」
知らないけど。
悪そうだから十分だ。
「仲間にする。」
問題児の男子は数秒黙っていた。
そして。
「……ぷっ。」
吹き出した。
「ははははは!」
腹を抱えて笑い始める。
「お前!」
指を差す。
「面白ぇな!」
「?」
「初めてだ!」
「俺を見てビビらねぇ奴!」
「そうか。」
「気に入った!」
今度は男子の方が笑顔になった。
「俺の名前はガイア!」
「ガイア・ヴェルグ!」
「よろしくな!」
勢いよく握手を求めてくる。
「……。」
違う。
仲良くなる予定じゃなかった。
「男爵様。」
ガイアはニヤリと笑う。
「交流祭が終わったら決闘しようぜ。」
「断る。」
「ますます気に入った!」
「違う。」
周囲の空気が一変する。
「すごい。」
「あのガイアが笑ってる。」
「初めて見た。」
他校の教師まで驚いていた。
「信じられない……。」
「誰とも話そうとしなかったガイア君が。」
「笑っている。」
ガイアは頭を掻きながら笑う。
「先生。」
「俺。」
照れくさそうに言う。
「ちょっと頭冷やしてくる。」
「え?」
「今日は喧嘩やめる。」
「……。」
教師は目を丸くした。
「分かった。」
「ありがとう。」
ガイアは背中を向ける前に。
もう一度だけ俺を見た。
「また会おうぜ。」
「……。」
去っていく。
その背中を見送る他校の教師が。
深く頭を下げた。
「男爵様。」
「ありがとうございました。」
「違う。」
「ガイア君は。」
教師は安心したように笑う。
「昔は優しい子だったんです。」
「……。」
「ですが色々あって、誰も信用しなくなってしまって。」
「違う。」
「今日。」
教師の目には涙が浮かんでいた。
「久しぶりに、あんな笑顔を見ました。」
「違う。」
その頃。
少し離れた場所では。
リリアと王女が小さく顔を見合わせていた。
「……。」
「……。」
「また。」
リリアが苦笑する。
「男爵様のお友達が増えましたね。」
「ええ。」
王女も優しく笑う。
「本当に。」
「誰とでも仲良くなってしまう方ですね。」
「違う。」
その一言だけが。
今日も誰にも届くことはなかった。
第54話を読んでいただきありがとうございます!
今回は交流祭で他校の問題児との出会いでした。
アルベルトは悪役仲間を作るつもりでしたが、結果的には一人の少年の心を少しだけ救うことになってしまいます。
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