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第52話 悪役なら他校の生徒を脅す

交流祭。


 屋台騒動から三十分。


「……。」


 また失敗した。


 悪役なのに。


 助けたことになっている。


「なら。」


 他校の生徒だ。


 交流祭には他の学院の生徒も来ている。


 そいつらなら事情も知らない。


 俺の悪評だけが伝わるはずだ。


 中央広場。


 見慣れない制服の生徒たちが屋台を見て回っていた。


「すごいな。」


「この学院、大きい。」


「魔法道具も多い。」


「……。」


 俺はその中でも、一人で歩いている男子生徒へ近付く。


「おい。」


「え?」


 男子生徒が振り向く。


「学院証を見せろ。」


「えっと……。」


「早くしろ。」


 威圧する。


 最低だ。


 理由もなく脅す。


 これなら嫌われる。


 男子生徒は慌てて学院証を取り出した。


「これです……。」


 俺は受け取る。


 一秒。


 二秒。


「返す。」


「え?」


「落とすな。」


 そう言って学院証を返した。


「……。」


 しまった。


 癖で確認してしまった。


 その瞬間だった。


「ありがとうございました!」


 男子生徒が深く頭を下げる。


「?」


「さっき人混みで誰かにぶつかられて!」


「学院証が半分抜けてたんです!」


「……。」


「男爵様が確認してくださらなかったら、落としていました!」


「違う。」


「本当に助かりました!」


「違う。」


 周囲の他校生まで集まってくる。


「どうした?」


「学院証落としそうだったらしい。」


「この人が助けたの?」


「優しいな。」


「違う。」


 すると。


「アルベルト様!」


 見慣れない女子生徒が駆け寄ってきた。


 他校の制服だ。


「?」


「去年の剣術大会で、一度お見かけしました!」


「知らん。」


「やっぱり素敵な方だったんですね!」


「違う。」


 その様子を。


 少し離れた場所で見ていたリリアが固まる。


「……。」


 王女も同じだった。


「あの方。」


 リリアがぽつりと呟く。


「誰でしょう。」


「他校の生徒ですね。」


 王女は静かに答える。


「……。」


 二人とも。


 なぜか少しだけ胸がざわつく。


 女子生徒は笑顔で話し続ける。


「またお会いできて嬉しいです!」


「そうか。」


「交流祭、一緒に回りませんか?」


「断る。」


「え?」


「面倒だ。」


「……。」


 一瞬だけ女子生徒は固まる。


 今度こそ。


 嫌われた。


 そう思った。


「ふふっ。」


 女子生徒は照れ笑いを浮かべた。


「噂通りなんですね。」


「?」


「誰にでも優しいからこそ。」


 嬉しそうに笑う。


「軽い気持ちでは誘わないんですね!」


「違う。」


「もっと仲良くなってから出直します!」


「来るな。」


「はい!」


 返事だけは元気だった。


 その場を去っていく。


「……。」


 意味が分からん。


 リリアと王女は。


 その後ろ姿を見送りながら。


 なぜか同時にため息を吐いた。


「男爵様。」


「人気者ですね。」


 二人の声が。


 ぴったり重なった。

第52話を読んでいただきありがとうございます!


今回は交流祭らしく、他校の生徒との交流回でした。


学院の外でもアルベルトの勘違いは止まらず、新たな人物まで登場します。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると、とても励みになります!


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