第51話 悪役なら屋台を壊す
交流祭。
模擬戦会場を後にした俺は、一人で歩いていた。
「……。」
人が多い。
早く帰りたい。
その時だった。
「男爵様!」
リリアが走ってくる。
その後ろには王女。
「模擬戦、本当に凄かったです!」
「違う。」
「最後の一撃、とても綺麗でした。」
「違う。」
褒められてばかりだ。
面白くない。
「なら。」
屋台だ。
交流祭には屋台が並んでいる。
悪役なら屋台を壊す。
これなら学院中から嫌われる。
中央広場。
そこには生徒たちが作った屋台が並んでいた。
「焼き鳥どうですか!」
「クレープあります!」
「魔法飴もありますよ!」
「……。」
俺は一番近くの屋台へ向かう。
木でできた看板。
「これを倒せば。」
営業妨害だ。
最低だ。
俺は看板を押した。
グラッ。
その瞬間。
「危ない!」
屋台の柱まで傾いた。
「!」
屋台の中には、小さな一年生の女子生徒がいた。
潰れる。
「……ちっ。」
反射だった。
俺は倒れかけた柱を片手で受け止める。
「早く出ろ。」
「は、はい!」
一年生は慌てて屋台の外へ飛び出す。
ドサッ。
屋台は半分崩れた。
だが。
誰も怪我はしていない。
「男爵様!」
リリアが駆け寄る。
「お怪我は!?」
「ない。」
王女も息を切らしていた。
「間に合って良かった……。」
「違う。」
違わない。
俺が倒したんだ。
教師も駆け付ける。
「何があったんですか!」
「俺が。」
俺は正直に言う。
「壊した。」
静まり返る。
よし。
これなら。
嫌われる。
しかし。
「先生!」
一年生の女子が大きな声を上げた。
「違います!」
「?」
「屋台が急に傾いて!」
「男爵様が助けてくれたんです!」
「違う。」
「本当です!」
泣きそうな顔で続ける。
「男爵様が支えてくれなかったら……。」
先生は屋台を見る。
柱の付け根が割れていた。
「なるほど。」
「最初から傷んでいたようですね。」
「違う。」
「危険に気付いて、支えてくださったんですね。」
「違う。」
周囲から拍手が起こる。
「さすが男爵様!」
「また助けた!」
「英雄じゃん!」
「……。」
英雄じゃない。
犯人だ。
屋台の責任者だった男子生徒まで頭を下げる。
「ありがとうございました!」
「修理代は僕たちで何とかします!」
「いや。」
思わず口を開く。
「俺が壊した。」
「男爵様。」
男子生徒は笑った。
「責任まで背負おうとしないでください。」
「違う。」
「全部見てました!」
「違う。」
誰も信じない。
その横で。
リリアは少しだけ誇らしそうに笑い。
王女も優しく微笑んでいた。
「……。」
交流祭。
まだ始まったばかりなのに。
悪役計画は。
今日も大失敗だった。
第51話を読んでいただきありがとうございます!
交流祭編はまだまだ続きます。
今回は悪役らしく屋台を壊そうとしたアルベルトでしたが、結果はまたしても真逆の評価になってしまいました。
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