第5話 悪役には側近が必要だ
第5話です。
今回は主人公の側近となる人物が登場します。
勘違いはさらに広がり始めますので、楽しんでいただければ幸いです。
領民にまで感謝された。
もう意味が分からない。
「……こうなったら。」
悪役には優秀な側近が必要だ。
前世のゲームでもアルベルトの周りには取り巻きがいた。
命令一つで動く駒。
汚れ仕事を押し付ける部下。
それくらいいなければ悪役とは言えない。
「エレナ。」
「はい。」
「執事を呼べ。」
「かしこまりました。」
数分後。
初老の執事が部屋へ入ってきた。
「お呼びでしょうか、坊ちゃま。」
「騎士団の中で一番腕の立つ奴を連れてこい。」
「一番、でございますか?」
「ああ。」
弱い奴はいらない。
どうせなら強い部下を従えたい。
「今すぐだ。」
「承知いたしました。」
執事は静かに頭を下げ、部屋を出て行った。
一時間後。
ノックが響く。
「失礼します。」
部屋へ入ってきたのは、一人の青年騎士だった。
黒髪を短く切り揃えた精悍な顔立ち。
二十代半ばくらいだろう。
腰には一本の剣。
姿勢にも隙がない。
「レオン・クロフォードと申します。」
「ほう。」
確かに強そうだ。
「坊ちゃまのお力になれるよう、全力を尽くします。」
「…………。」
真面目そうだな。
だからこそ都合がいい。
「お前。」
「はい。」
「俺の命令は絶対だ。」
「もちろんです。」
「理由も聞くな。」
「承知しました。」
「誰に何を言われても俺を優先しろ。」
「はい。」
よし。
完全に悪役の部下だ。
これなら周囲からも恐れられる。
「坊ちゃま。」
レオンが突然片膝をついた。
「あなた様の覚悟、この命に代えてもお守りいたします。」
「……は?」
「領民のため、ご自身が悪名を背負われるおつもりなのですね。」
「違う。」
「執事より事情は伺いました。」
「何をだ。」
「嫌われ役を買ってでも領地を変えたい、と。」
「誰がそんなこと言った。」
執事を見る。
執事は深く頭を下げた。
「坊ちゃまは昔から、お気持ちを素直にお話しになられませんので。」
「いや。」
「皆、理解しております。」
「理解してない。」
「私も命を懸けてお支えいたします。」
レオンは真っ直ぐ俺を見つめる。
その目には迷いがない。
……駄目だ。
また勘違いだ。
「好きにしろ。」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに返事をされた。
違う。
そうじゃない。
俺は悪役の手下が欲しかっただけだ。
忠義に厚い騎士なんて求めていない。
部屋を出ていくレオンを見送りながら、俺は深いため息をついた。
「……また失敗か。」
悪役への道は、思っていた以上に険しかった。
第5話を読んでいただきありがとうございます!
少しずつアルベルトの周囲には頼れる仲間……本人からすれば勘違いしている人たちですが、増え始めました。
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