第48話 悪役ならくじを細工する
交流祭。
二人一組。
「……。」
面倒だ。
誰かと回るくらいなら、一人の方がいい。
なら。
「くじを細工する。」
悪役らしい。
自分が有利になるよう細工する。
これなら嫌われる。
翌日。
教室の前には箱が置かれていた。
「それでは。」
教師が笑顔で言う。
「順番にくじを引いてください。」
俺の番だ。
箱へ手を入れる。
「……。」
こっそり紙を一枚だけ袖へ隠す。
そして。
適当な紙を引いた。
完璧だ。
これで後から好きに組める。
「男爵様。」
教師が不思議そうな顔をする。
「紙が二枚ありますよ?」
「……。」
しまった。
袖から一枚落ちた。
教室中の視線が集まる。
「男爵様?」
リリアが首を傾げる。
「二枚?」
王女も驚いている。
よし。
今だ。
「細工した。」
堂々と言う。
教室が静まり返る。
「俺だけ有利になるようにな。」
完璧だ。
最低だ。
今度こそ嫌われる。
しかし。
教師は小さく笑った。
「なるほど。」
「?」
「引き直しますか?」
「なぜだ。」
「アルベルト君なら。」
教師は優しく続ける。
「誰かが二枚引いてしまわないよう、先に確認してくださったんですね。」
「違う。」
「ありがとうございます。」
「違う。」
教師は箱を開ける。
「あ、本当ですね。」
中には紙が一枚、くっついていた。
「湿気で張り付いていたようです。」
教室から安堵の声が漏れる。
「良かった。」
「誰か余るところだった。」
「男爵様ありがとう!」
「違う。」
違う違う違う。
俺は細工したんだ。
「男爵様。」
リリアが嬉しそうに笑う。
「流石です。」
「違う。」
王女も微笑む。
「ご自身が疑われることも覚悟で、皆さんを優先されたのですね。」
「違う。」
ルークが大笑いする。
「ははは!」
「アルベルト!」
「お前そういう損する役ばっかだな!」
「違う。」
結局。
くじは引き直しになった。
「では改めて。」
教師が結果を読み上げる。
「アルベルト君は――」
一瞬。
教室中が静まり返る。
「リリアさんです。」
「えっ!?」
リリアが立ち上がる。
「ほ、本当ですか!?」
満面の笑みだった。
「……。」
最悪だ。
その直後。
「王女殿下は……ルーク君。」
「え?」
王女が固まる。
「俺?」
ルークも目を丸くした。
教室中が笑いに包まれる。
「意外すぎる!」
「ルーク頑張れ!」
「殿下よろしくお願いします!」
王女は少しだけリリアを見る。
リリアも王女を見る。
「……。」
「……。」
二人は微笑み合う。
「お互い。」
リリアが小さく頭を下げる。
「頑張りましょう。」
「ええ。」
王女も笑顔で頷いた。
だが。
二人とも心の中では。
男爵様と組みたかった。
その気持ちだけは。
誰にも言えなかった。
もちろん。
俺だけは。
「最悪だ……。」
としか思っていなかった。
第48話を読んでいただきありがとうございます!
ついに交流祭のペアが決定しました。
アルベルトの計画はまたも失敗し、新たな組み合わせで交流祭編がスタートします。
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