第46話 悪役なら恋人を別れさせる
人気者作戦も失敗した。
弟子まで増えた。
「……。」
もうどうすれば嫌われる。
悪役らしいこと。
悪役らしいこと……。
「恋人だ。」
学院には恋人が多い。
なら、その仲を壊せばいい。
最低だ。
これ以上ない悪役だ。
昼休み。
中庭では昨日付き合い始めたばかりの二人が楽しそうに話していた。
「今日も一緒だね。」
「うん!」
あの二人か。
昨日の告白。
成功したカップルだ。
「よし。」
俺は真っ直ぐ歩いていく。
「男爵様?」
男子生徒が立ち上がる。
「どうしました?」
「お前。」
「はい。」
「別れろ。」
「…………。」
辺りが静まり返る。
女子生徒も固まっていた。
よし。
今度こそ。
最低だ。
「理由は?」
男子生徒が真剣な表情で尋ねる。
「気に入らん。」
短く答える。
「だから別れろ。」
完璧だ。
理不尽そのもの。
「……。」
二人は顔を見合わせた。
よし。
喧嘩になれ。
そう思った。
しかし。
「なるほど。」
男子生徒が深く頷いた。
「え?」
「そういうことだったんですね。」
「?」
「彼女。」
男子生徒は隣の女子を見る。
「最近、無理して笑ってる。」
「えっ……。」
「僕も気付いてた。」
「……。」
女子生徒の目に涙が浮かぶ。
「ご、ごめんね。」
「違う。」
男子生徒は優しく首を横に振る。
「僕が気付いてあげられなかった。」
「……。」
「男爵様。」
二人揃って頭を下げる。
「ありがとうございました!」
「違う。」
「一度ちゃんと話し合います!」
「違う。」
「男爵様は。」
女子生徒が涙を拭きながら笑う。
「私たちに必要なことを教えてくださったんですね。」
「違う。」
まただ。
また勘違いだ。
その時。
「男爵様!」
リリアが駆け寄ってくる。
「何かあったんですか?」
「別れさせようとした。」
「……。」
リリアは二人を見る。
二人とも笑っていた。
「仲直りできました!」
「え?」
「ちゃんと本音を話せました!」
「男爵様のおかげです!」
「違う。」
王女も少し遅れて到着する。
「どうやら。」
状況を見て微笑んだ。
「男爵様は恋愛相談まで受けるようになられたのですね。」
「違う。」
「学院中の皆さんが頼る理由も分かります。」
「違う。」
その日の放課後。
新しい噂が学院中を駆け巡る。
『男爵様は恋愛相談まで乗ってくださるらしい。』
『相談したら恋人とうまくいったって!』
『今度相談してみようかな。』
「……。」
俺は静かに頭を抱えた。
悪役になるため。
恋人を別れさせようとしただけなのに。
気付けば。
学院公認の恋愛相談役になりかけていた。
第46話を読んでいただきありがとうございます!
今回は恋人を別れさせようとしたアルベルトでしたが、結果はまたしても正反対になってしまいました。
学院での勘違いはますます広がり、本人の知らないところで新たな噂まで生まれています。
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