第45話 悪役なら人気者をいじめる
告白作戦も失敗。
もう何をやっても駄目だ。
「……なら。」
人気者を狙う。
人気者をいじめれば。
周囲は必ず俺を嫌う。
悪役らしいじゃないか。
昼休み。
学院の廊下。
女子生徒たちに囲まれている一人の男子がいた。
「レオ様!」
「今日も素敵です!」
「今度、一緒にお茶しませんか?」
金髪で整った顔立ち。
いかにも人気者だ。
「お前。」
俺はその男子の前へ立った。
「……え?」
周囲が静まり返る。
「お前だ。」
「ぼ、僕?」
「ああ。」
俺は男子の胸元を軽く掴んだ。
「ちょ、ちょっと!」
女子たちが慌てる。
「何するの!」
「男爵様!」
「やめてください!」
よし。
これだ。
悪役らしい。
「外へ来い。」
「わ、分かった!」
人気者の男子は青ざめながら頷いた。
二人で人気のない裏庭へ向かう。
「男爵様……。」
男子は震えていた。
「ぼ、僕が何かしましたか?」
「した。」
「えっ!?」
「お前。」
俺は真っ直ぐ見る。
「人気者らしいな。」
「え?」
「気に入らん。」
「……。」
これでいい。
完全に悪役だ。
「だから。」
「はい……。」
「俺と決闘しろ。」
「……え?」
「人気者を叩き潰せば。」
悪名も広がる。
「嫌われる。」
「……。」
男子は数秒固まったあと。
突然、頭を下げた。
「お願いします!」
「?」
「僕を鍛えてください!」
「……は?」
「男爵様ほど強い人に決闘を申し込まれるなんて!」
「違う。」
「光栄です!」
「違う。」
「僕!」
拳を握る。
「もっと強くなりたかったんです!」
「違う。」
「よろしくお願いします!」
「断る。」
「え?」
「鍛えない。」
「そんな!」
その時だった。
「男爵様!」
リリアが走ってきた。
「やっぱりここでした!」
その後ろには王女もいる。
「……。」
また見つかった。
「決闘ですか?」
リリアが男子を見る。
「はい!」
男子は満面の笑みだった。
「男爵様が直々に稽古を付けてくださるそうです!」
「違う。」
「すごい!」
リリアまで拍手する。
「男爵様!」
「後輩の面倒まで見るなんて!」
「違う。」
王女も優しく微笑んだ。
「男爵様らしいですね。」
「違う。」
「人気者だからではなく。」
男子を見る。
「努力している姿を見て声を掛けられたのでしょう?」
「違う。」
全部違う。
俺は嫌われたかっただけなんだ。
「男爵様!」
男子が深々と頭を下げる。
「今日から弟子です!」
「違う。」
「よろしくお願いします!」
「違う!」
学院中へ。
新しい噂が流れ始めた。
『男爵様は才能だけじゃなく、努力する者も認めてくださるらしい。』
「……。」
俺は静かに空を見上げた。
悪役。
今日もまた。
完全敗北だった。
第45話を読んでいただきありがとうございます!
今回は人気者を狙って悪役らしく振る舞うつもりが、またしても勘違いされてしまいました。
アルベルトの「悪役計画」はまだまだ終わりそうにありません。
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