第44話 悪役なら告白を邪魔する
放課後。
学院の廊下を歩いていると。
「今日こそ言うんだ。」
「頑張れよ。」
男子生徒たちが何やら話していた。
「……。」
告白か。
なるほど。
悪役なら。
恋路を邪魔する。
最低だ。
確実に嫌われる。
俺はそのまま中庭へ向かった。
一本の大きな木の下。
一人の男子生徒が緊張した様子で立っている。
その向かいには。
一人の女子生徒。
「……。」
今から始まるらしい。
「好きです。」
男子生徒が深く頭を下げる。
「付き合ってください!」
よし。
ここだ。
俺は二人の間へ歩いていく。
「どけ。」
「えっ?」
二人とも固まる。
「邪魔だ。」
わざと冷たく言う。
これで雰囲気は壊れる。
悪役として完璧だ。
「す、すみません!」
男子生徒は慌てて道を開けた。
俺は何事もなかったように通り過ぎる。
数歩歩いた、その時。
「……先輩!」
男子生徒が突然叫んだ。
「ありがとうございます!」
「?」
振り返る。
男子生徒は笑っていた。
「緊張して何も言えなくなってたんです!」
「……。」
「先輩が来てくださったおかげで!」
拳を握る。
「覚悟が決まりました!」
「好きです!」
もう一度。
女子生徒へ真っ直ぐ頭を下げる。
「付き合ってください!」
女子生徒は驚いたあと。
小さく笑った。
「……はい。」
「本当!?」
「うん。」
二人とも笑顔だった。
周囲から拍手が起こる。
「おめでとう!」
「良かった!」
「青春だな!」
「……。」
違う。
俺は邪魔したんだ。
すると。
「男爵様!」
男子生徒が走ってきた。
「背中を押してくださってありがとうございました!」
「押してない。」
「先輩のおかげです!」
「違う。」
男子生徒は何度も頭を下げる。
「一生忘れません!」
「忘れろ。」
その様子を。
少し離れた場所からリリアと王女が見ていた。
「男爵様。」
リリアが優しく笑う。
「また誰かを助けちゃいましたね。」
「ええ。」
王女も頷く。
「本当に。」
少しだけ微笑む。
「恋まで応援してしまうなんて。」
「……。」
二人は笑い合う。
だが。
次の瞬間。
女子生徒が嬉しそうに恋人と腕を組んだ。
「これからよろしくね!」
「うん!」
その光景を見たリリアが。
ほんの少しだけ。
アルベルトの腕へ視線を向けた。
「……。」
王女も同じだった。
「……。」
二人の視線が重なる。
「殿下。」
「はい。」
「……。」
「……。」
数秒沈黙したあと。
二人は同時に笑った。
「まだ。」
「負けません。」
また。
同じ言葉が重なった。
もちろん。
そのやり取りを見ていた俺は。
「仲良いな。」
それしか思わなかった。
第44話を読んでいただきありがとうございます!
今回は学院らしい告白イベントのお話でした。
アルベルトは邪魔をしたつもりでしたが、結果的にまた誰かの背中を押してしまいました。
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