第41話 悪役なら二人を無理やり手伝わせる
翌日。
昼休み。
「男爵様!」
「お待たせしました!」
リリアと王女が並んで歩いてくる。
二人とも笑顔だった。
「……。」
本当に一緒に弁当を作ってきたのか。
昨日の冗談じゃなかったらしい。
「どうぞ。」
リリアが弁当箱を開く。
「今日は二人で作りました!」
「私も少しだけお手伝いしました。」
王女も嬉しそうだった。
「……。」
昨日まで競っていたはずなんだが。
なんで仲良くなってる。
「なら。」
悪役らしく。
二人まとめてこき使えばいい。
「おい。」
「「はい。」」
「食ったあと片付けもしろ。」
「分かりました!」
「お任せください。」
「……。」
違う。
喜ぶな。
「あと。」
俺は食べながら続ける。
「飲み物。」
「はい!」
リリアが立ち上がる。
「私が!」
「では私はデザートを。」
王女も立ち上がる。
「……。」
二人とも嬉しそうだ。
その時だった。
リリアが急に立ち止まる。
「あ。」
「どうしたんですか?」
王女が尋ねる。
「男爵様。」
リリアが申し訳なさそうに俯く。
「私……。」
「?」
「飲み物忘れちゃいました。」
「……。」
珍しい。
いつもなら完璧なのに。
「すぐ買ってきます!」
慌てて走り出そうとした。
しかし。
「リリアさん。」
王女が優しく肩へ手を置く。
「私が行きます。」
「でも……。」
「今日は。」
王女は柔らかく笑った。
「リリアさんがお弁当を頑張ってくださいましたから。」
「……。」
リリアは少しだけ目を潤ませる。
「ありがとうございます。」
「いいえ。」
二人とも微笑み合う。
「……。」
俺はパンをかじる。
なんでだ。
揉めろよ。
普通。
そこは揉めるだろ。
数分後。
「お待たせしました。」
王女が飲み物を持って戻ってくる。
「ありがとうございます!」
リリアは素直に頭を下げた。
「今度は私が何かしますね!」
「では。」
王女が少し照れながら言う。
「また一緒にお弁当を作ってください。」
「はい!」
満面の笑みだった。
「もちろんです!」
俺は空を見上げる。
「……。」
ライバルだったはずなんだが。
いつの間にか。
親友みたいになっている。
すると。
「男爵様。」
二人同時にこちらを見る。
「どうでしたか?」
「美味しかったですか?」
「……普通だ。」
二人は顔を見合わせる。
「ふふっ。」
「えへへ。」
また笑った。
「男爵様。」
リリアが小さく笑う。
「"普通"って。」
「男爵様にとっては褒め言葉ですよね。」
「違う。」
「私もそう思います。」
王女まで頷く。
「違う。」
誰も信じない。
その様子を見ていたルークが大笑いした。
「ははは!」
「アルベルト!」
「なんだ。」
「もう結婚しろ!」
「しない。」
「どっちと?」
「どっちでも!」
「……。」
リリアと王女は。
一瞬だけ笑顔を止めた。
「……。」
「……。」
二人はちらりと互いを見る。
その一瞬だけ。
学院一穏やかな二人の間に。
小さな火花が散った気がした。
もちろん。
俺だけは最後まで気付かなかった。
第41話を読んでいただきありがとうございます!
今回はライバルだった二人が少しずつ信頼関係を築いていく一方で、アルベルトだけは相変わらず勘違いしたままのお話でした。
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