第40話 悪役なら二人を競わせる
ルークの一言から一日。
学院中がおかしかった。
「見た?」
「昨日の中庭。」
「男爵様とリリアさん、それに王女殿下。」
「三人で昼食だったらしいよ。」
「……。」
噂が広まっている。
最悪だ。
「なら。」
逆に利用する。
二人を競わせればいい。
悪役なら部下同士を争わせるものだ。
昼休み。
「リリア。」
「はい!」
「王女。」
「はい。」
「今日は俺の昼食を用意しろ。」
二人は同時に頷いた。
「分かりました!」
「お任せください。」
「ただし。」
俺は腕を組む。
「美味かった方だけ食う。」
「……!」
一瞬だけ空気が止まる。
よし。
揉めろ。
競え。
そして俺を嫌え。
「分かりました!」
リリアが力強く頷いた。
「負けません!」
「私もです。」
王女も静かに微笑む。
「全力を尽くします。」
数十分後。
二人が戻ってきた。
リリアは手作り弁当。
王女は城の料理人特製の料理。
「どうぞ!」
「お召し上がりください。」
俺はリリアの弁当を一口食べる。
「……普通だ。」
次に王女の料理。
「……普通だ。」
二人とも緊張した表情で俺を見ている。
「ど、どうでしたか?」
「お気に召しましたか?」
「……。」
よし。
「どっちもまずい。」
「……。」
静まり返る。
今のは最低だった。
これなら。
絶対嫌われる。
しかし。
「……良かった。」
リリアがほっと息を吐いた。
「え?」
「男爵様。」
少し照れながら笑う。
「嘘をつくの苦手ですもんね。」
「?」
「本当にまずかったら、普通って言います。」
「違う。」
「つまり。」
リリアは嬉しそうだった。
「どっちも美味しかったんですね。」
「違う。」
王女も小さく笑う。
「私もそう思います。」
「違う。」
「男爵様は。」
王女は優しく続ける。
「片方だけ褒めると、もう片方が傷付くと思われたのでしょう。」
「違う。」
「だから。」
二人は顔を見合わせる。
「どちらもまずい、と。」
「違う。」
「優しいですね。」
「違う!」
思わず声が大きくなる。
周囲の生徒たちがこちらを見る。
「また男爵様だ。」
「二人とも笑ってる。」
「なんで怒ってるのに仲良さそうなんだ?」
俺は額へ手を当てた。
もう駄目だ。
その時。
「男爵様。」
リリアがお弁当箱を閉じながら言う。
「明日は。」
ちらりと王女を見る。
「一緒に作りませんか?」
「……え?」
王女は少し驚いたあと。
ふわっと微笑んだ。
「楽しそうですね。」
「はい!」
「ぜひ。」
二人は笑い合う。
「……。」
俺は呆然とその光景を見ていた。
競わせるつもりだった。
なのに。
仲良くなってる。
「意味が分からん……。」
悪役への道は。
今日もまた。
盛大に失敗したのだった。
第40話を読んでいただきありがとうございます!
ついにリリアと王女が「ライバル」でありながら、少しずつ仲良くなり始めました。
アルベルトは競わせようとしていますが、その計画は毎回予想外の方向へ進んでしまいます。
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