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第38話 悪役ならデートを邪魔する

昼休み。


 俺は中庭を歩いていた。


「……。」


 今日は静かだ。


 リリアも。


 王女も。


 ルークもいない。


「やっと一人か。」


 そう思った時だった。


「男爵様!」


 リリアが嬉しそうに駆け寄ってきた。


「探しました!」


「なんだ。」


「今日のお昼、一緒に――」


 その時。


「男爵様。」


 反対側から王女も歩いてきた。


「もしご都合がよろしければ、お昼をご一緒しませんか?」


「……。」


 またか。


 二人とも俺を見ている。


「えっと……。」


 リリアが王女を見る。


「殿下もですか。」


「はい。」


 王女も微笑む。


「ご一緒できればと思いまして。」


 微妙な空気だった。


「……。」


 これは使える。


 悪役なら。


 女の子同士を揉めさせる。


 その方が最低だ。


「よし。」


 俺は頷く。


「二人とも来い。」


「「はい!」」


 即答だった。


 中庭のベンチへ座る。


 俺を真ん中にして。


 右へリリア。


 左へ王女。


「…………。」


 なんでこうなった。


「男爵様。」


 リリアがお弁当箱を開く。


「卵焼き作ってきました!」


「男爵様。」


 王女も箱を開ける。


「城の料理人が作ったサンドイッチです。」


「……。」


 二人とも差し出してくる。


 よし。


 ここで片方だけ選べば。


 絶対揉める。


 悪役として完璧だ。


 俺は迷わず。


 リリアの卵焼きを取った。


「いただく。」


「……!」


 リリアの顔がぱっと明るくなる。


「お、お口に合いますか?」


「普通だ。」


「良かった……。」


 小さく胸を撫で下ろす。


 一方。


 王女は少しだけ視線を落とした。


「……。」


 よし。


 今度こそ成功だ。


 そう思った。


「男爵様。」


 王女が小さく笑う。


「でしたら。」


 サンドイッチを半分に切る。


「卵焼きのあとで、こちらも召し上がってください。」


「……。」


「味比べです。」


「そうか。」


 結局受け取ることになった。


 そして。


「男爵様!」


 リリアも負けじと。


「明日はもっと美味しいの作ります!」


「殿下。」


 王女も穏やかに微笑む。


「でしたら私は別のお料理をご用意します。」


「負けません。」


「私もです。」


 二人とも笑顔だった。


 笑顔なんだが。


「……。」


 明らかに競っている。


 そこへ。


「おーい!」


 ルークがパンを片手に走ってきた。


「何して――」


 目の前の光景で止まる。


「……。」


 男一人。


 両隣には学院一の美少女と王女。


「アルベルト。」


「なんだ。」


「お前。」


 肩へ手を置く。


「敵に回したくない。」


「意味が分からん。」


「学院中の男子を敵に回してるぞ。」


「知らん。」


 すると周囲では。


「また男爵様だ。」


「リリアさんも王女殿下も笑ってる。」


「羨ましい……。」


「いや怖い。」


 男子生徒たちは遠巻きに眺めるだけだった。


 俺はサンドイッチを一口食べる。


「……。」


 普通に美味い。


「どうですか?」


「美味しいですか?」


 二人が同時に身を乗り出す。


「……普通だ。」


 二人は顔を見合わせる。


 そして。


「ふふっ。」


「えへへ。」


 なぜか。


 二人とも嬉しそうに笑っていた。


 悪役として。


 今日も完全敗北だった。

第38話を読んでいただきありがとうございます!


今回は昼食を通して、リリアと王女のライバル意識が少しずつ表に出てきました。


アルベルト本人は二人を揉めさせるつもりでしたが、結果はいつも通りでした。


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