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第37話 悪役なら恩を仇で返す

 風邪も治った。


 翌日、教室へ入る。


「男爵様!」


 リリアが安心したように笑った。


「もう大丈夫なんですね!」


「……ああ。」


 王女も席を立つ。


「安心しました。」


「そうか。」


 二人とも嬉しそうだ。


「……。」


 昨日、見舞いに来たからか。


 なら。


「恩を仇で返そう。」


 悪役らしい。


 助けてもらった相手を突き放す。


 これなら確実に嫌われる。


 昼休み。


 俺は中庭へ向かった。


 ベンチへ座る。


 案の定。


「男爵様!」


 リリアがやって来た。


「ご一緒しても――」


「断る。」


「え?」


「昨日は世話になった。」


「はい。」


「余計なお世話だった。」


「……。」


 よし。


 言ったぞ。


 最低な一言だ。


「もう俺に構うな。」


「……。」


 リリアは俯いた。


 今度こそ。


 嫌われた。


 そう思った。


「男爵様。」


 ゆっくり顔を上げる。


「やっぱり優しいですね。」


「……は?」


「私に迷惑を掛けたと思ってるから、わざとそんなこと言うんですよね。」


「違う。」


「本当に。」


 リリアは小さく笑う。


「不器用です。」


「違う。」


「私は。」


 一歩近付く。


「迷惑なんて思ってません。」


「……。」


「だから。」


 にこっと笑う。


「また体調を崩したら、お見舞いに行きますね。」


「来るな。」


「行きます。」


「来るな。」


「絶対行きます。」


「……。」


 駄目だ。


 全然駄目だ。


 その時。


「男爵様。」


 王女も中庭へ姿を見せた。


「お身体の具合はいかがですか?」


「治った。」


「安心しました。」


「もう来るな。」


「はい?」


「見舞いもいらん。」


「……。」


 王女は少しだけ考える。


「では。」


 微笑んだ。


「今度はお見舞いではなく。」


「?」


「遊びに伺います。」


「来るな。」


「はい。」


 返事だけは良い。


 絶対来る顔だった。


「男爵様!」


 ルークまで走ってくる。


「もう剣振れるか!」


「振れる。」


「放課後勝負だ!」


「嫌だ。」


「遠慮するな!」


「遠慮じゃない。」


 結局。


 いつもの四人になっていた。


 リリア。


 王女。


 ルーク。


 そして俺。


 その様子を遠くから見ていた女子生徒が呟く。


「いいなぁ。」


「男爵様の周りだけ。」


「毎日楽しそう。」


「……。」


 俺だけは。


 全く楽しくなかった。


 静かに昼飯を食べたい。


 ただ、それだけなのに。


 悪役への道も。


 一人の昼休みも。


 今日もまた遠ざかっていくのだった。

第37話を読んでいただきありがとうございます!


今回は「恩を仇で返す」をテーマにしたお話でした。


アルベルトは冷たく突き放したつもりでも、周囲は相変わらず正反対に受け取ってしまいます。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると、とても励みになります!


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