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第36話 悪役なら見舞いも断る

 保健室。


 ベッドへ横になる。


「……。」


 静かだ。


 ようやく一人になれた。


「悪くない。」


 熱も少しある。


 今日はゆっくり眠ろう。


 そう思った。


 コンコン。


 扉がノックされる。


「入ります。」


 リリアだった。


 両手には果物が入った籠を持っている。


「男爵様。」


「なんだ。」


「お見舞いです。」


「帰れ。」


「嫌です。」


 即答だった。


「食べてください。」


「いらん。」


「栄養つけないと駄目です。」


「……。」


 聞かない。


 すると。


 コンコン。


 また扉が開いた。


「失礼します。」


 王女だった。


 今度は小さな箱を持っている。


「城の料理人が作ったスープです。」


「いらん。」


「温かいうちにどうぞ。」


「帰れ。」


「帰りません。」


「……。」


 なんなんだ今日は。


 さらに。


 コンコン。


「アルベルト!」


 ルークだった。


「見舞いに来たぞ!」


「来るな。」


「遠慮するな!」


「遠慮じゃない。」


 狭い保健室へ三人集まる。


 保健の先生が苦笑した。


「静かにしてくださいね。」


「「「はい。」」」


 三人同時だった。


「……。」


 俺は天井を見る。


 一人になりたかった。


 その時。


「男爵様。」


 リリアがリンゴを取り出す。


「切ってきました。」


「いらん。」


「じゃあ一口だけ。」


「いらん。」


「では。」


 王女がスプーンを持つ。


「スープだけでも。」


「いらん。」


「冷めてしまいます。」


「構わん。」


「アルベルト!」


 ルークが胸を張る。


「俺が食ってやる!」


「食うな。」


 保健室へ笑いが広がる。


 先生まで笑っていた。


「ふふっ。」


「皆さん、本当に仲が良いですね。」


「違う。」


 全員が口を揃えて言う。


「男爵様が大切なんです。」


「……。」


 違う。


 何一つ違う。


 俺は悪役だ。


 心配される側じゃない。


 その時。


 ぐぅぅぅ。


 腹が鳴った。


「……。」


 静まり返る保健室。


 リリアが吹き出した。


「男爵様。」


「笑うな。」


「ご、ごめんなさい。」


 笑いを堪えている。


 王女も口元を隠していた。


「少しだけ。」


「可愛かったです。」


「……。」


 人生で初めて言われた。


 悪役に。


 可愛いは違うだろ。


「男爵様。」


 リリアがリンゴを差し出す。


「今なら食べます?」


「……。」


 少しだけ迷う。


 腹は減っている。


「一つだけだ。」


「はい!」


 リリアが嬉しそうに笑う。


 それを見た王女も微笑む。


「では。」


「スープも一口だけ。」


「……一口だけだ。」


「ありがとうございます。」


 ルークが大笑いした。


「結局食うんじゃねぇか!」


「うるさい。」


 保健室には。


 また笑い声が響いていた。


 そして。


 ベッドの横で笑い合う二人を見て。


 保健の先生は小さく呟く。


「青春ですね。」


「違う。」


 俺だけが。


 最後まで否定していた。

第36話を読んでいただきありがとうございます!


今回は保健室でのお見舞い回でした。


本人は誰にも来てほしくありませんでしたが、気付けば保健室まで賑やかになってしまいました。


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