第3話 使用人を怯えさせろ
第3話です。
今回は使用人だけではなく、屋敷全体で少しずつ勘違いが広がり始めます。
ここからアルベルトの思惑とは逆に、人望がどんどん積み重なっていきます。
昨日の失敗は認めよう。
料理を捨てようとしただけで感謝された。
意味が分からない。
「……今度こそ。」
もっと悪役らしいことをする。
使用人は主人に怯えてこそだ。
俺は屋敷の廊下を歩きながら、適当に使用人を探す。
「あっ、坊ちゃま!」
若い庭師の青年が頭を下げた。
「おはようございます!」
笑顔だ。
その笑顔を消してやる。
「おい。」
「は、はい!」
「庭の花が気に入らん。」
青年の顔色が変わる。
よし。
その調子だ。
「全部植え替えろ。」
「えっ……?」
「今日中だ。」
広大な庭園を一日で植え替えるなど不可能。
理不尽。
まさに悪役だ。
「できません、とは言わせん。」
低い声で告げる。
青年は青ざめながら何度も頭を下げた。
「か、かしこまりました!」
よし。
今度こそ嫌われた。
そう思いながら部屋へ戻った。
昼過ぎ。
窓の外を見ると、庭師たちが慌ただしく動いていた。
「本当にやってるのか。」
好きにすればいい。
どうせ終わらない。
夕方になれば謝りに来るだろう。
ところが――。
「坊ちゃま。」
エレナが紅茶を運んできた。
「庭の植え替えが終わりました。」
「……は?」
「ご覧になりますか?」
案内されて庭へ出る。
そこには。
「…………。」
昨日までとは全く違う景色が広がっていた。
色鮮やかな花々。
見事に整えられた植え込み。
中央には噴水が映えるよう配置まで変わっている。
「坊ちゃま!」
庭師の青年が駆け寄ってきた。
「ご命令ありがとうございました!」
「何がだ。」
「古くなった花を全部替えたいと思っていたんです! でも予算の都合で誰も決断できなくて……。」
「……。」
「坊ちゃまが命令してくださったおかげで、ようやく庭を一新できました!」
周りの庭師たちも深く頭を下げる。
「さすが坊ちゃまです!」
「ここまで先を読んでおられたとは!」
「領地一番の庭園になります!」
「…………。」
違う。
そんなつもりじゃない。
俺は理不尽を押し付けただけだ。
なのに。
「坊ちゃま。」
エレナが微笑む。
「皆、とても嬉しそうです。」
「……そうか。」
「やはり坊ちゃまは、働く者のことを一番に考えてくださるのですね。」
「違う。」
「ふふっ。」
笑って流された。
話を聞け。
俺は悪役だ。
本当に悪役なんだ。
なのに誰一人として信じない。
俺は小さくため息をついた。
「次だ……。」
次こそは。
絶対に嫌われてみせる。
その決意だけは、誰にも勘違いされることはなかった。
……本人以外には。
第3話を読んでいただきありがとうございます!
悪役を目指しているのに、なぜか評価だけが上がっていくアルベルトでした。
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