第28話 悪役なら罰を与える
昼食作戦も失敗。
むしろおかずが増えた。
「……。」
意味が分からない。
悪役として何一つ成功しない。
なら。
「罰だ。」
悪役なら他人へ理不尽な罰を与える。
そうすれば嫌われる。
これ以上確実な方法はない。
午後の実技授業。
二人一組で木剣の打ち合いをするらしい。
「組み分けはこちらです。」
教師が名前を読み上げる。
「アルベルト君は……ルーク君。」
「おっ!」
ルークが笑顔で木剣を持つ。
「よろしく!」
「よろしくしない。」
訓練場へ向かう。
「始め!」
合図と同時に、ルークが飛び込んできた。
「いくぞ!」
勢いよく木剣を振る。
だが。
足元の砂で少し滑った。
「あっ。」
バランスを崩す。
危ない。
俺は反射的に腕を掴み、そのまま支えた。
「大丈夫か。」
「……。」
ルークは固まっていた。
「離すぞ。」
「あ、ああ。」
手を離す。
すると。
「先生!」
俺は教師を呼んだ。
「なんでしょう。」
「こいつ。」
ルークを指差す。
「集中力が足りん。」
「え?」
「こんなことで転ぶようじゃ話にならん。」
よし。
人前で恥をかかせる。
悪役らしい。
「今日は放課後も居残りで素振り千回だ。」
「……えっ?」
ルークは目を丸くする。
「俺が?」
「ああ。」
教師も困ったような顔をした。
「アルベルト君、それは……。」
「やらせろ。」
これならルークも俺を嫌う。
そう思った。
「分かっ――」
ルークが頭を下げた。
「ありがとう!」
「……は?」
「さっき転びそうになって初めて分かった!」
「?」
「俺、調子に乗ってた!」
なんで感謝してる。
「アルベルトが言わなかったら、俺もっと大きな試合で怪我してたかもしれない!」
「違う。」
「居残りやる!」
「違う。」
「先生!」
ルークは真っ直ぐ教師を見る。
「お願いします!」
教師は笑みを浮かべた。
「分かりました。」
「ありがとうございます!」
「……。」
また失敗だ。
さらに周囲から拍手まで起こる。
「さすが男爵様。」
「甘やかさないんだ。」
「本当に相手のためを思ってる。」
「厳しいけど優しい。」
「違う。」
何一つ違う。
俺は嫌われたいだけなんだ。
授業終了後。
ルークは本当に一人で素振りをしていた。
「九百九十七!」
「九百九十八!」
「九百九十九!」
「千!」
汗だくになりながら木剣を振り切る。
俺は横を通り過ぎるだけだった。
「終わった!」
ルークは満面の笑みで俺を見る。
「アルベルト!」
「なんだ。」
「次は負けないからな!」
「好きにしろ。」
「ありがとう!」
「だから違う。」
俺は校舎へ戻る。
その様子を窓から見ていたリリアは、小さく笑った。
「男爵様って。」
隣には王女が立っている。
「厳しいですよね。」
「ええ。」
王女も優しく微笑む。
「でも。」
二人は同時に呟いた。
「優しい人です。」
その言葉が重なった瞬間。
二人は顔を見合わせた。
「……。」
「……。」
少しだけ。
ほんの少しだけ。
空気が張り詰めた。
第28話を読んでいただきありがとうございます!
今回はルークとの関係がさらに深まる回となりました。
そして最後には、リリアと王女の間にも少しだけ意識し合う空気が流れ始めます。
「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると嬉しいです!
感想やレビューもお気軽にお待ちしております!
次回もよろしくお願いいたします!




