第27話 悪役なら昼食を奪う
食堂。
今日も生徒で賑わっていた。
俺は入口で腕を組む。
「……悪役らしいこと。」
最近、全然足りていない。
授業も失敗。
試験も失敗。
人間関係も失敗。
なら。
「昼飯でも奪うか。」
最低だが悪役らしい。
これなら確実に嫌われる。
俺は周囲を見回す。
すると。
「男爵様!」
ルークが大きく手を振っていた。
リリアまでいる。
「こっちです!」
「行かん。」
そのまま別の席へ向かう。
そこで一人、静かに食事をしている男子生徒を見つけた。
「おい。」
「え?」
眼鏡を掛けた小柄な男子生徒が顔を上げる。
「その昼飯。」
「は、はい?」
「もらう。」
「えぇっ!?」
返事も待たずにトレーを持ち上げる。
これだ。
横暴。
理不尽。
悪役そのもの。
俺はそのまま近くの席へ座った。
「……。」
男子生徒は固まったままだ。
よし。
嫌われた。
そう思った瞬間だった。
「男爵様!」
男子生徒が勢いよく立ち上がる。
「ありがとうございます!」
「……は?」
「今日はお金を忘れてしまって……。」
「?」
「昼食を諦めようと思っていたんです!」
「……。」
「男爵様が自分の食事と交換してくださるなんて!」
交換?
俺は自分の席を見る。
そこには俺がさっき受け取った昼食が置かれていた。
「誰だ。」
振り返る。
ルークだった。
「俺!」
「……。」
「アルベルトが昼飯取ったまま行くから置いといた!」
「余計なことを。」
「気にするな!」
気にする。
ものすごく気にする。
眼鏡の男子生徒は何度も頭を下げていた。
「男爵様……!」
「俺みたいな平凡な貴族にまでお気遣いいただけるなんて……!」
「違う。」
「絶対に恩は忘れません!」
食堂中がざわつく。
「また男爵様だ。」
「昼食まで譲ったの?」
「優しすぎる。」
「…………。」
違う。
奪ったんだ。
俺は奪ったんだぞ。
すると。
「男爵様。」
リリアがトレーを持って隣へ座る。
「今日は私のデザートも食べますか?」
「いらん。」
「甘い物は疲れが取れますよ。」
「いらん。」
反対側にはルーク。
「俺の唐揚げ食う?」
「いらん。」
「遠慮するな!」
「遠慮じゃない。」
さらに。
「男爵様。」
聞き覚えのある声だった。
「……。」
王女だった。
いつの間にか食堂へ来ていたらしい。
侍女が持つ籠から小さな箱を取り出す。
「城の料理人が作ったお菓子です。」
「召し上がりますか?」
「いらん。」
「では、お持ち帰りください。」
「いらん。」
「明日なら?」
「いらん。」
「ふふっ。」
嬉しそうに笑う王女。
周囲では。
「王女殿下まで……。」
「男爵様の隣に。」
「リリアさんもいるぞ。」
「なんだあの空間。」
そんな声が聞こえてくる。
「……。」
俺は静かに味噌……いや、この世界だからスープを飲んだ。
悪役になるため昼食を奪った結果。
なぜか昼食のおかずが三倍になっていた。
意味が分からない。
第27話を読んでいただきありがとうございます!
今回は食堂での勘違い騒動でした。
アルベルトの悪役計画は相変わらず失敗続きですが、その分ヒロインたちとの距離は少しずつ近づいています。
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