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第25話 悪役なら女子を泣かせる

取り巻き作戦も失敗した。


 しかもルークは勝手に親友扱いしてくる始末だ。


「……なら。」


 悪役なら女の子を泣かせる。


 最低だが、それくらいしなければ悪役とは言えない。


 昼休み。


 教室にはリリアが一人、本を読んでいた。


「ちょうどいい。」


 俺はリリアの机の前で立ち止まる。


「男爵様?」


 リリアが笑顔を向けてくる。


 その笑顔も今日までだ。


「その本。」


「はい。」


「貸せ。」


「え?」


「今すぐだ。」


「え、えっと……。」


 戸惑いながらも本を差し出す。


 俺は受け取ると、そのまま教室の後ろへ歩いた。


「……。」


 リリアは席に座ったまま俺を見つめている。


 返さない。


 これなら嫌われる。


 間違いない。


「男爵様。」


 数分後。


 恐る恐る近付いてきた。


「あの……。」


「なんだ。」


「その本……。」


「返さん。」


「えっ。」


「今日一日は俺のだ。」


「…………。」


 リリアは小さく俯いた。


 よし。


 落ち込んでいる。


 これだ。


 悪役だ。


 しかし。


「リリアさん。」


 女子生徒が小声で話しかける。


「大丈夫?」


「……はい。」


 リリアは少しだけ笑った。


「男爵様にも興味を持っていただけたんですね。」


「え?」


「だって男爵様、本なんて借りる相手を選びそうだし。」


「た、確かに……。」


 別の女子まで頷く。


「つまりリリアさんのおすすめなら間違いないってことじゃない?」


「そ、そういうことですか?」


 リリアの頬がほんのり赤くなる。


「嬉しい……。」


「…………。」


 違う。


 そうじゃない。


 俺は嫌がらせをしたんだ。


 するとルークが肩を叩いてきた。


「アルベルト。」


「なんだ。」


「本なんて読むのか?」


「読まん。」


「照れるな照れるな!」


「照れてない。」


「リリアのおすすめなら読む気になったんだろ?」


「違う。」


 違う違う違う。


 放課後。


 リリアが俺の席までやって来た。


「男爵様。」


「なんだ。」


「本……。」


「返す。」


 机へ置く。


「ありがとうございます。」


「……。」


「どうでしたか?」


「読んでない。」


「ふふっ。」


 リリアは優しく笑った。


「大丈夫です。」


「?」


「次はもっと男爵様が好きそうな本を選びますね。」


「いらん。」


「任せてください!」


 なんでそうなる。


 教室を出ていくリリアを見送りながら、女子生徒たちがひそひそ話している。


「見た?」


「見た見た!」


「本を借りるなんて、ほぼ告白じゃない?」


「リリアさん良かったねぇ。」


 その言葉を聞いたリリアは。


「そ、そんなこと……。」


 否定しながらも、耳まで真っ赤になっていた。


 そして、その様子を教室の入口から静かに見つめる少女が一人。


「……。」


 王女だった。


 学院長へ用事があり学院へ来ていた彼女は、偶然その光景を目にしていた。


「殿下?」


 侍女が不思議そうに声を掛ける。


「お知り合いですか?」


「ええ。」


 王女は優しく微笑む。


 だが、その笑顔はどこかぎこちなかった。


「人気者ですね。」


 そう呟いた視線は、アルベルトではなく。


 リリアへ向けられていた。

第25話を読んでいただきありがとうございます!


今回はリリアの気持ちが少しだけ前へ進み、さらに新たな空気も生まれ始めました。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると嬉しいです!


感想やレビューもお気軽にお待ちしております!


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