第22話 悪役なら授業をサボる
遅刻も駄目だった。
教師には心配され。
生徒には尊敬された。
「……なら。」
授業そのものをサボればいい。
悪役といえば不真面目。
授業なんて出る必要はない。
午前最後の鐘が鳴る。
生徒たちが教室へ向かう中、俺だけは反対方向へ歩いていた。
「図書館……か。」
静かだ。
人も少ない。
ここなら授業が終わるまで時間を潰せる。
俺は適当に本を一冊取り、窓際の席へ腰掛けた。
「……。」
悪くない。
静かで落ち着く。
たまにはこういう時間もいい。
ページをめくっていると、不意に足音が聞こえた。
「やっぱり。」
聞き覚えのある声だった。
「男爵様。」
リリアが苦笑しながら立っていた。
「授業は?」
「サボった。」
「正直ですね。」
「隠す理由もない。」
リリアは俺の向かいへ座る。
「リリア。」
「はい。」
「お前もサボりか。」
「違います。」
そう言って一冊の本を見せた。
「先生に資料を借りてくるよう頼まれたんです。」
「そうか。」
「でも。」
リリアは小さく笑う。
「男爵様なら、ここにいる気がしました。」
「なんでだ。」
「何となくです。」
勘だけか。
すると、図書館の奥から司書らしき女性が歩いてきた。
「あなたがアルベルト様ですね。」
「そうだ。」
「以前からお話は伺っております。」
「悪い噂なら嬉しい。」
「図書館へ足を運んでくださりありがとうございます。」
「……。」
また違う。
「最近の学生は本を読まないものですから。」
司書は嬉しそうに微笑む。
「男爵様のような方が利用してくださると、とても嬉しいです。」
「授業をサボってるだけだ。」
「勉学を優先されるなんて素晴らしいですね。」
「違う。」
「静かな場所で知識を深める姿勢、見習いたいです。」
「だから違う。」
話にならない。
そこへ教師までやって来た。
「アルベルト君。」
「見つかったか。」
「授業へ来ないので探しました。」
「怒るか?」
「いえ。」
教師は俺の机に置かれた本を見る。
『王国建国史』
「熱心ですね。」
「違う。」
「授業より先の内容まで読んでいるとは。」
「違う。」
「皆さん。」
教師は後ろにいた数名の生徒へ振り返る。
「自主的な学習は素晴らしいことです。」
「はい!」
拍手まで起きた。
「…………。」
俺は本を閉じる。
サボった。
間違いなくサボった。
なのに。
なぜか自主学習になっていた。
「帰る。」
「授業へ戻りましょう。」
「そうする。」
もう何をしても駄目だ。
俺は静かに立ち上がり、教師の後ろを歩いた。
廊下を歩きながら、リリアが嬉しそうに話しかけてくる。
「男爵様。」
「なんだ。」
「今度、おすすめの本を教えてください。」
「知らん。」
「ふふっ。」
楽しそうだった。
俺は空を見上げる。
悪役への道は、今日もまた遠かった。
第22話を読んでいただきありがとうございます!
今回は授業をサボって悪役らしく振る舞う……はずが、またしても周囲の勘違いで評価が上がってしまいました。
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