第20話 食堂で一人で食べたい
昼休み。
授業が終わると同時に教室が賑やかになる。
「一緒に食堂へ行きませんか?」
「今日は何を食べようかな。」
そんな声が飛び交う中、俺は静かに席を立った。
「……一人がいい。」
悪役に友達はいらない。
食事くらい一人で十分だ。
食堂へ入ると、予想以上の広さだった。
何百人も座れそうな長机。
料理の香りが漂い、多くの生徒で賑わっている。
俺は料理だけ受け取り、一番隅の席へ向かった。
「ここなら誰も来ないだろ。」
椅子へ座る。
これで静かに食べられる。
そう思った。
「男爵様。」
「……。」
聞き覚えのある声だった。
顔を上げる。
リリアがトレーを持って立っている。
「隣、よろしいですか?」
「駄目だ。」
「では向かいに座ります。」
「何も聞いてなかったな。」
リリアは笑顔のまま向かいへ座った。
すると。
「リリアさんだけずるいです!」
「私たちも!」
クラスメイトの女子が三人。
男子まで二人やってくる。
「男爵様、ご一緒しても?」
「駄目だ。」
「失礼します!」
誰も断られていないかのように座り始めた。
「…………。」
なんなんだ。
俺は一人で食べたいだけなんだが。
「男爵様って普段は何をされてるんですか?」
「領地経営とか?」
「騎士団って本当に強いんですか?」
質問攻めだった。
「知らん。」
「そうですか!」
「違う。」
「さすがですね!」
「違う。」
何を答えても会話が成立しない。
その時。
「面白そうだな。」
昨日決闘を申し込んできた金髪の男子生徒がやって来た。
「隣、空いてるか?」
「空いてない。」
「そうか!」
笑顔で座った。
「…………。」
なんでだ。
「改めて名乗る。」
男子生徒は胸に手を当てる。
「俺はルーク・フォン・アッシュクロフト。」
「そうか。」
「昨日は悪かった。」
「気にしてない。」
「やっぱり器が大きいな!」
「違う。」
また始まった。
その頃には周囲の席まで埋まり始めていた。
「男爵様の周り、人が増えてない?」
「人気者だな。」
「私も話しかけてみようかな。」
嫌な予感しかしない。
俺は急いで食事を終え、立ち上がる。
「帰る。」
「あっ!」
リリアが立ち上がる。
「もうですか?」
「ああ。」
「またご一緒してください!」
「しない。」
「楽しみにしてます!」
「……。」
話が通じない。
俺は食堂を後にした。
廊下を歩きながら、小さく呟く。
「……次から弁当にするか。」
その一言を聞いた生徒たちは。
『男爵様は私たちに気を遣わせないため、一人で食べるつもりなんだ。』
そんな勘違いをしていたことを、俺はもちろん知らなかった。
第20話を読んでいただきありがとうございます!
学院生活も少しずつ賑やかになってきました。
アルベルトは一人で静かに過ごしたいだけなのですが、その願いとは裏腹にどんどん人が集まってきます。
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