第19話 決闘を申し込まれた
翌日。
教室へ入った瞬間だった。
「アルベルト・フォン・グランディア!」
大声が教室へ響く。
金髪の男子生徒が俺を睨んでいた。
制服からして上級貴族だろう。
「……誰だ。」
「俺の名前も知らないだと!」
「知らん。」
興味もない。
そのまま席へ向かおうとすると、男は俺の前へ立ち塞がった。
「逃げるのか!」
「邪魔だ。」
「王女殿下に取り入った卑怯者!」
「?」
何の話だ。
「噂は聞いている!」
教室中の視線が集まる。
「王女殿下を利用して名声を得ようとしているそうだな!」
「違う。」
「言い訳は聞かん!」
男は指を突き付ける。
「決闘だ!」
「断る。」
即答だった。
「なっ……!」
「面倒だ。」
勝っても負けても面倒になる。
悪役としても意味がない。
「怖気づいたか!」
「違う。」
「なら受けろ!」
「嫌だ。」
すると周囲がざわつき始めた。
「男爵様が……。」
「決闘を断るなんて。」
「きっと理由があるんだ。」
だから違う。
面倒だから断ってるだけだ。
その時。
「失礼します。」
リリアが俺の前へ出た。
「男爵様はそのような理由で逃げる方ではありません。」
「いや。」
「きっと、意味のない争いを望まれていないのでしょう。」
「違う。」
「さすがです……。」
「違うって。」
金髪の男子生徒はさらに怒りを露わにした。
「俺を馬鹿にしているのか!」
「してない。」
「そこまで余裕なら!」
腰の木剣を抜く。
「一撃だけでも受けてもらう!」
「待て。」
聞こえていない。
勢いよく踏み込み、木剣を振り下ろした。
「……。」
俺は半歩だけ横へ動く。
ブンッ!
木剣は空を切った。
「なっ!」
勢い余った男子生徒はそのまま前へ転ぶ。
「いてぇ!」
教室中が静まり返る。
「……今の。」
「避けただけだ。」
俺は本当に避けただけだった。
しかし。
「すごい……。」
「全く無駄がなかった。」
「相手を傷つけず、自分も傷つかない最小限の動き……。」
「これが男爵様。」
「…………。」
違う。
偶然だ。
男子生徒も立ち上がりながら俺を見る。
「くっ……。」
悔しそうに拳を握る。
「俺を傷つけずに勝つとは……。」
「勝ってない。」
「完敗だ。」
そう言って頭を下げた。
「すまなかった。」
「……そうか。」
何なんだ。
戦ってすらいないんだが。
男子生徒は教室を出て行った。
そしてその背中を見送りながら、リリアが嬉しそうに微笑む。
「男爵様。」
「なんだ。」
「本当にお強いんですね。」
「違う。」
俺はただ。
巻き込まれただけなんだ。
第19話を読んでいただきありがとうございます!
今回は学院らしく決闘騒動のお話でした。
アルベルトは戦う気などまったくありませんでしたが、それすら周囲には別の意味で伝わってしまいました。
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