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第174話 悪役なら受け継がれるものを見る

 グランディア領。


 数年ぶりの大規模な祭り。


 理由は。


 交流都市成立記念日。


「……。」


 街を見る。


 昔。


 この領地には。


 こんな大きな祭りはなかった。


 ただの貴族領。


 静かな場所。


 それが今では。


 各地から人が集まる場所になっている。


「男爵様。」


 リリアが隣に立つ。


「懐かしいですね。」


「何が。」


「最初の頃です。」


「……。」


 思い出す。


 領民から警戒されていた頃。


 自分も。


 誰かを信用していなかった頃。


「変わりましたね。」


「……。」


「ああ。」


 素直に認める。


 祭りの会場。


 そこには。


 新しい世代がいた。


 昔の争いを知らない子供たち。


 人間も。


 魔族も。


 普通に遊んでいる。


「アルベルト様。」


 セレナが言う。


「彼らにとって。」


「争いは歴史の話になりつつあります。」


「……。」


 それが。


 一番の変化なのかもしれない。


 昔。


 当たり前だった争い。


 今は。


 知らないものになっている。


「男爵様!」


 声。


 交流学校の卒業生たち。


「研究施設の新しい成果を発表します!」


「……。」


 また新しい未来。


 話を聞く。


 魔法技術。


 医療。


 生活改善。


 全部。


 昔なら考えられなかったもの。


「すごいですね。」


 リリアが言う。


「あなたが始めたものです。」


「違う。」


 即答。


「?」


「始めたきっかけになっただけだ。」


「続けたのは。」


「皆だ。」


 リリアは笑う。


「その考え方。」


「もう誰も否定しないと思います。」


 夕方。


 祭りの中心。


 記念碑の前。


 若い領主候補たちが集まる。


「男爵様。」


「一つお願いがあります。」


「何だ。」


「この記念碑に。」


「新しい文章を追加したいです。」


「……。」


 見る。


 現在の文章。


『違いを恐れず、共に歩む』


「何を追加する。」


 青年は答える。


「『未来は次の世代が作る』」


「……。」


 少し考える。


「いいと思う。」


 青年たちは嬉しそうに笑う。


 夜。


 屋敷。


 庭。


「今日は。」


 リリアが言う。


「嬉しかったですか?」


「……。」


 空を見る。


「少し。」


「また少しですね。」


「十分だ。」


 リリアは笑う。


「男爵様らしいです。」


 その時。


 イリスが静かに現れる。


「報告があります。」


「今度は何だ。」


「世界管理システム。」


「最後の記録更新。」


「……。」


 まだ続いていたのか。


『記録』


『アルベルト・フォン・グランディア』


『最大の功績』


『確認』


 文字が浮かぶ。


『世界を変えたこと』


『ではない』


「……。」


『変化を続けられる場所を作ったこと』


 沈黙。


 俺は街を見る。


 明かり。


 声。


 人々。


「……。」


 それなら。


 悪くない。


 いや。


 それが。


 一番いいのかもしれない。

第174話を読んでいただきありがとうございます!


今回は、アルベルトが「自分の功績」ではなく「受け継がれていく仕組み」こそが本当の成果だと気付く回でした。


物語開始時は孤独を選ぼうとしていたアルベルトが、今では未来を託せる場所を作っています。

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