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第175話 悪役なら最後の授業をする

 グランディア交流学校。


 卒業式。


 何度目だろうか。


 この場所に来るのは。


「……。」


 校舎を見る。


 最初。


 この学校を作ると言われた時。


 反対する声は多かった。


 人間と魔族。


 一緒に学ぶ。


 そんなことが本当にできるのか。


 誰も分からなかった。


 しかし。


 今。


 この場所は。


 当たり前のように存在している。


「男爵様。」


 校長が頭を下げる。


「今年もありがとうございます。」


「……。」


「俺は。」


「何もしていない。」


 校長は笑う。


「その言葉も。」


「もう何度も聞きました。」


「……。」


 卒業生たちが並ぶ。


 その中には。


 研究者になる者。


 商人になる者。


 領地を支える者。


 様々な未来がある。


「アルベルト様。」


 リリアが言う。


「今日は挨拶をお願いします。」


「……。」


 嫌な予感。


「なぜ。」


「卒業生が聞きたいそうです。」


 逃げ道はない。


 壇上へ上がる。


 昔なら。


 大勢の前で話すなど。


 絶対に避けていた。


 しかし。


 今は。


 知っている顔がある。


 だから。


 口を開く。


「……。」


「俺から言えることは少ない。」


 生徒たちは静かに聞く。


「未来で。」


「何か大きなことを成し遂げようとする必要はない。」


「……。」


「誰かを助ける。」


「約束を守る。」


「間違えたら。」


「直す。」


「それだけでいい。」


 昔の自分へ。


 言っているような気もした。


「強い人間とは。」


「失敗しない人間ではない。」


「失敗しても。」


「また選び直せる人間だ。」


 生徒たちは真剣に聞いている。


「そして。」


 少し間。


「一人で全部やろうとするな。」


「……。」


 リリアを見る。


 セレナを見る。


 仲間たちを見る。


「誰かを信じろ。」


「それが。」


「一番難しいことだから。」


 拍手。


 静かな。


 でも。


 温かい拍手。


 壇上を降りる。


「立派でしたね。」


 リリアが言う。


「そうか。」


「はい。」


「昔の男爵様なら。」


「絶対言わなかった言葉です。」


「……。」


 帰り道。


 校門を見る。


 そこには。


 新しい言葉が刻まれていた。


『学び、繋がり、未来へ進む』


「……。」


 いい言葉だ。


 夜。


 屋敷。


 庭。


「男爵様。」


 イリスが来る。


「最後の記録更新です。」


「まだあったのか。」


「はい。」


 空に文字が浮かぶ。


『アルベルト・フォン・グランディア』


『残したもの』


『確認』


『力』


『否』


『称号』


『否』


『財産』


『否』


 少し間。


『人との繋がり』


『肯定』


『未来への意思』


『肯定』


「……。」


 イリスが続ける。


「これが。」


「最終記録になる可能性が高いです。」


 俺は空を見る。


 力でも。


 名前でも。


 ない。


 残ったのは。


 人との関係。


「……。」


「それなら。」


「悪くないな。」


 十一章から続いた日々。


 未来へ残すもの。


 その答えが。


 少しずつ見えていた。

第175話を読んでいただきありがとうございます!


アルベルトが次の世代へ最後の言葉を渡す回でした。


かつて「誰にも頼らない」と決めた彼が、最後には「信じること」の大切さを伝える側になっています。

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