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第169話 悪役なら新しい時代を見守る

 グランディア領。


 研究施設建設開始から。


 数ヶ月。


「……。」


 建設現場を見る。


 昔なら。


 ここはただの空き地だった。


 今は。


 多くの人が集まっている。


 人間の技術者。


 魔族の魔法研究者。


 獣人の職人。


 以前なら。


 同じ場所にいることすら難しかった者たち。


「順調ですね。」


 リリアが言う。


「ああ。」


 建物が少しずつ形になっていく。


「男爵様。」


 若い研究者が来る。


「報告です。」


「何だ。」


「魔法と機械技術の融合実験。」


「第一段階成功しました。」


「……。」


 周囲が喜ぶ。


 俺は少し見る。


「問題は。」


「安全面です。」


「確認しています。」


「なら。」


「続けろ。」


 研究者は驚く。


「簡単に許可されるのですね。」


「?」


「以前の男爵様なら。」


「もっと厳しく確認したと思います。」


「……。」


 確かに。


 昔なら。


 危険を恐れていた。


 しかし。


「危険だから。」


「止めるだけでは。」


「何も生まれない。」


「……。」


「必要なのは。」


「危険を理解して。」


「扱うことだ。」


 研究者は頷く。


「ありがとうございます。」


 その後。


 リリアが笑う。


「本当に変わりましたね。」


「またか。」


「はい。」


「昔の男爵様なら。」


「未知の技術なんて。」


「絶対に近付けなかったと思います。」


「……。」


 空を見る。


 世界外側の存在。


 管理者。


 最初は。


 未知のもの全てが怖かった。


 でも。


 未知だからこそ。


 向き合う意味がある。


 夜。


 屋敷。


 庭。


「……。」


 紅茶。


 静かな時間。


「男爵様。」


 リリアが言う。


「研究施設。」


「完成したら。」


「どうしますか?」


「どうするとは。」


「見に行きますか?」


「……。」


 少し考える。


 昔なら。


 興味がないと言った。


 でも。


「行く。」


「珍しいですね。」


「作ったものは。」


「最後まで見る。」


 リリアは嬉しそうに笑う。


 翌日。


 完成式。


 多くの人が集まる。


 若い研究者たち。


 未来を作る者たち。


「アルベルト男爵。」


 代表者が言う。


「この場所は。」


「あなたが作った交流の結果です。」


「……。」


 また。


 自分の名前。


 しかし。


「違う。」


「?」


「作ったのは。」


「ここにいる全員だ。」


 研究者たちは笑う。


「そうですね。」


「ですが。」


「始まりを作った人がいたことも事実です。」


「……。」


 否定できない。


 式典。


 最後。


 施設の扉が開く。


 新しい時代の入口。


「……。」


 俺は見る。


 未来。


 自分が知らないもの。


 自分では作れないもの。


 それを。


 次の世代が作っている。


 悪くない。


 むしろ。


 少し楽しみだった。


 その夜。


 世界管理システムから。


 最後の記録更新。


『未来創造』


『確認』


『観測終了まで残り一項目』


「……。」


 イリスが読む。


「最後の項目です。」


「何だ。」


 少し間。


「アルベルト・フォン・グランディア。」


「あなた自身が。」


「最後に何を選ぶか。」


「……。」


 俺自身。


 まだ。


 終わっていなかった。

第169話を読んでいただきありがとうございます!


今回はアルベルトが「未来を作る側」ではなく「未来を託す側」になっていく回でした。


彼が残したものは施設や制度だけではなく、違う存在同士が協力できるという考え方そのものです。


次回、世界管理システム最後の項目――アルベルト自身の選択へ進みます。

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