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第168話 悪役なら次の夢を認める

グランディア邸。


 翌日。


「提案?」


 俺は集まった生徒たちを見る。


 交流学校の卒業生。


 そして。


 これからを担う若者たち。


「はい。」


 代表の青年が一歩前へ出る。


「新しい研究施設を作りたいです。」


「研究施設?」


「人間の技術。」


「魔族の魔法。」


「獣人の知識。」


「それぞれを合わせる場所です。」


「……。」


 昔なら。


 危険だと思ったかもしれない。


 未知の力。


 新しい技術。


 予測できないもの。


 しかし。


 今は違う。


「理由は。」


 青年は答える。


「今まで。」


「違うものだから離れていました。」


「でも。」


「違うからこそ。」


「新しいものが生まれると思ったからです。」


「……。」


 その言葉。


 少し昔の自分を思い出す。


 知らないものを避ける。


 関わらない。


 それが安全だと思っていた。


 でも。


 世界は。


 違うものが出会うことで変わった。


「危険はある。」


 青年が頷く。


「はい。」


「失敗もする。」


「はい。」


「それでも。」


「やりたいです。」


「……。」


 俺は少し考える。


 そして。


「許可する。」


 全員が驚く。


「本当ですか?」


「ああ。」


「ただし。」


 続ける。


「安全確認はする。」


「無茶は禁止だ。」


「失敗したら。」


「原因を考える。」


「次へ繋げる。」


 青年たちは笑顔になる。


「ありがとうございます!」


 その後。


 リリアが言う。


「すぐ認めましたね。」


「必要だと思ったからだ。」


「昔なら。」


「絶対に慎重になっていました。」


「……。」


 確かに。


 昔の俺なら。


 危険を避けることを優先した。


 でも。


 今は。


「止めるだけでは。」


「未来は作れない。」


 リリアは嬉しそうに笑う。


「本当に変わりましたね。」


 午後。


 建設予定地を見る。


 何もない場所。


 ここに。


 新しいものができる。


「男爵様。」


 イリスが隣に立つ。


「未来予測。」


「更新されました。」


「またか。」


「はい。」


「悪い結果か?」


「いいえ。」


 イリスは首を振る。


「以前。」


「世界の未来は。」


「一つの大きな力に依存していました。」


「……。」


「しかし。」


「現在。」


「多数の可能性が存在します。」


「つまり。」


「誰か一人ではなく。」


「多くの人が未来を作っています。」


「……。」


 少し笑う。


「それなら。」


「良い未来だな。」


 夜。


 庭。


 紅茶。


「男爵様。」


 リリアが言う。


「昔。」


「世界がこんな風になると思いましたか?」


「……。」


「思わない。」


 即答。


「では。」


「後悔していますか?」


 空を見る。


 転生した日。


 悪役になると決めた。


 あの選択。


 あの考え。


 全部が今につながっている。


「していない。」


「はい。」


「ただ。」


 少し間。


「最初から。」


「もう少し楽に生きても良かったとは思う。」


 リリアが笑う。


「それは。」


「今だから言えることですね。」


「ああ。」


 風が吹く。


 未来へ続く風。


 その時。


 新しい報告が届く。


『研究施設建設計画』


『各国より支援申請』


「……。」


 また。


 グランディア領が大きくなる。


「男爵様。」


「はい。」


「静かな生活。」


「遠ざかっていませんか?」


「……。」


 少し考える。


「いや。」


「?」


「これも。」


「今の俺の静かな生活だ。」


 リリアは微笑んだ。

第168話を読んでいただきありがとうございます!


今回は、次の世代が新しい未来を作ろうとする回でした。


アルベルトは昔なら「危険だから止める」を選んでいましたが、今は「安全を確保しながら挑戦を支える」側になっています。


彼が守っているのは過去ではなく、未来になりました。

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