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第165話 悪役なら自分の役割を考える

グランディア邸。


 朝。


「……。」


 机の上。


 大量の書類。


「増えたな。」


 俺が呟く。


「増えましたね。」


 リリアが答える。


「なぜ他人事だ。」


「男爵様の領地が発展しているからです。」


「……。」


 納得するしかない。


 昔。


 面倒事を避けるために。


 領地のことも最低限しか関わらなかった。


 今は。


 毎日のように。


 未来の話をしている。


「男爵様。」


 セレナが報告書を持ってくる。


「新しい制度についてです。」


「何だ。」


「若い世代への領主教育制度。」


「順調です。」


「……。」


 以前。


 俺一人が判断していたこと。


 今は。


 多くの人が考えている。


「問題は。」


「ありません。」


「珍しいな。」


 セレナが微笑む。


「問題がないことが問題ですか?」


「……。」


 否定できない。


 長い間。


 何か起きることに慣れすぎていた。


 世界の危機。


 古代の力。


 未知の存在。


 そんなものばかり。


 でも。


 今ある問題は。


 税の調整。


 学校の運営。


 街の発展。


 普通の領主の仕事。


「……。」


 悪くない。


 午後。


 街を歩く。


 視察。


 と言えば聞こえはいい。


 ただの散歩だ。


「男爵様!」


 店主が声をかける。


「新しい商品ができました!」


「……。」


 見せられたもの。


 人間の技術。


 魔族の魔法。


 組み合わせた商品。


「以前なら。」


 店主が笑う。


「こんなもの考えられませんでした。」


「……。」


「でも今は。」


「色々な人が協力できます。」


 俺は商品を見る。


 これも。


 未来の一つ。


 誰かが作ったもの。


 誰かが繋げたもの。


「良いな。」


 自然に言葉が出る。


 店主が驚く。


「え?」


「いや。」


「良いものだ。」


 その夜。


 屋敷。


 庭。


「男爵様。」


 リリアが紅茶を渡す。


「最近。」


「素直になりましたね。」


「そうか?」


「はい。」


「昔なら。」


「絶対に褒めませんでした。」


「……。」


 確かに。


 昔の俺なら。


 認めることを負けだと思っていた。


 でも。


「認める方が。」


「楽だ。」


 リリアは笑う。


「それも変化ですね。」


 空を見る。


 世界は。


 もう俺を中心に回っていない。


 それでいい。


 むしろ。


 それが望みだった。


 その時。


 イリスが現れる。


「報告です。」


「何だ。」


「世界管理システム。」


「最後の観測項目を提示しました。」


「……。」


「最後?」


「はい。」


 イリスが読む。


「アルベルト・フォン・グランディア。」


「あなたが。」


「世界へ残したもの。」


「確認開始。」


「……。」


 俺は少し考える。


 力。


 名誉。


 称号。


 そんなものではない。


「答えは。」


「もう出ています。」


 リリアが言う。


「?」


「この領地です。」


「……。」


 窓の外。


 明かり。


 人々の生活。


「そうか。」


 小さく呟く。


 悪役になろうとして。


 最後に残したものは。


 誰かが安心して暮らせる場所だった

第165話を読んでいただきありがとうございます!


今回はアルベルトが「自分が何を残したのか」を考える回でした。


力や英雄という名前ではなく、普通の日常や未来を作れる場所こそが、彼にとって一番大きな成果になっています。

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