↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/183

第164話 悪役なら新しい英雄を見る

 グランディア領。


 春。


 交流学校の入学式。


 数年前。


 ここに学校を作る話をした時。


 反対する者もいた。


 本当に成功するのか。


 人間と魔族が共に学べるのか。


 誰も確信はなかった。


「……。」


 しかし。


 今。


 目の前には。


 新しい生徒たちが並んでいる。


「多いですね。」


 リリアが言う。


「ああ。」


 予定より。


 かなり多い。


「今年から。」


「他国からの入学希望者も増えました。」


 セレナが資料を見る。


「グランディア領で学びたいという人が。」


「……。」


 不思議なものだ。


 昔。


 この領地は。


 避けられる場所だった。


 今は。


 目指される場所になっている。


「男爵様。」


 一人の少年が近づく。


「質問があります。」


「何だ。」


「英雄になるには。」


「どうすればいいですか?」


「……。」


 突然の質問。


 周囲も聞いている。


 昔なら。


 力を持て。


 勝て。


 そう答えたかもしれない。


 でも。


「英雄になろうとするな。」


 少年が驚く。


「え?」


「……。」


「誰かが困っている時。」


「助ける。」


「必要なことをする。」


「それだけだ。」


「でも。」


 少年は首を傾げる。


「それでは普通じゃないですか?」


「……。」


 少し考える。


「そうだ。」


「普通だ。」


「だから。」


「誰でもできる。」


 会場が静かになる。


「英雄という名前は。」


「後から周りが付けるものだ。」


 少年は真剣に頷く。


「……。」


 その姿を見る。


 昔の自分とは。


 全く違う未来を見ている。


 式典の後。


 校庭。


「男爵様。」


 リリアが言う。


「嬉しそうでしたね。」


「そうか?」


「はい。」


「また顔に出ていました。」


「……。」


 もう諦めた。


 そこへ。


 イリスが来る。


「報告があります。」


「今度は何だ。」


「世界管理システム。」


「未来予測更新。」


「……。」


「危険ではありません。」


「なら。」


「何だ。」


 イリスは答える。


「新たな英雄候補。」


「多数確認。」


「……。」


「俺ではないのか。」


「はい。」


 即答。


「……。」


 少しだけ。


 笑った。


 昔なら。


 自分以外の存在なんて。


 考えなかった。


 でも。


 今は。


「それでいい。」


 イリスが見る。


「?」


「俺一人が必要な世界より。」


「誰でも誰かを助けられる世界の方がいい。」


 リリアが微笑む。


「それが。」


「男爵様の作った未来ですね。」


「……。」


 夕方。


 庭。


 紅茶。


「静かですね。」


 リリアが言う。


「ああ。」


「でも。」


「昔とは違いますね。」


「……。」


 分かっている。


 昔の静けさは。


 誰もいない静けさ。


 今の静けさは。


 誰かがいる安心の中の静けさ。


 その違い。


 夜。


 空を見る。


 世界は進んでいる。


 自分がいなくても。


 きっと。


「……。」


「なら。」


「もう少しだけ。」


「見届けてもいいか。」


 誰にも聞こえない声。


 そう呟いた。

第164話を読んでいただきありがとうございます!


今回は「英雄が一人ではなくなる未来」を描く回でした。


アルベルトが目指していたのは、自分が永遠に必要とされる世界ではなく、誰もが誰かを支えられる世界でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。