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第161話 悪役なら新しい日常を守る

 グランディア領。


 朝。


「……。」


 平和だ。


 最近。


 本当に。


 大きな事件が起きていない。


「男爵様。」


 リリアが紅茶を置く。


「不満そうですね。」


「……。」


「違う。」


「では。」


「何だ。」


「何か起きると思っていますか?」


「……。」


 否定できない。


 これまで。


 静かな時間の後には。


 必ず何かあった。


 世界再生計画。


 古代文明。


 世界外側。


 普通ではありえないことばかり。


 しかし。


「今回は。」


「本当に何もないかもしれませんよ。」


 リリアは笑う。


「……。」


 そうだ。


 世界は。


 もう俺一人を中心に動く必要はない。


 そのために。


 ここまで来た。


 その時。


「男爵様!」


 執事が慌てて入ってくる。


「……。」


 やはり。


 何かある。


「何だ。」


「緊急ではありません。」


「……。」


 珍しい。


「では。」


「新しい報告です。」


 執事が書類を渡す。


「交流学校の卒業生たちが。」


「グランディア領で働きたいと希望しています。」


「……。」


 予想外だった。


「外へ出ないのか。」


「はい。」


「ここで。」


「次の世代を育てたいそうです。」


「……。」


 窓を見る。


 街。


 学校。


 人々。


 昔。


 この領地は。


 ただの貴族の土地だった。


 今は。


 帰ってきたいと思われる場所になっている。


「男爵様。」


 セレナが言う。


「嬉しいですか?」


「……。」


 少し考える。


「悪くない。」


「はい。」


 午後。


 交流学校へ向かう。


 卒業生たちと話す。


「なぜここに残る。」


 一人の青年が答える。


「ここが。」


「初めて自分を種族ではなく。」


「自分として見てくれた場所だからです。」


「……。」


 別の少女も言う。


「ここなら。」


「次の子たちにも。」


「同じ経験をしてもらえます。」


 俺は黙る。


 そんな大きな理由で。


 この場所を選んでいる。


「……。」


「なら。」


「任せる。」


 青年たちは驚く。


「え?」


「この領地は。」


「もう俺だけのものじゃない。」


「……。」


「ここで暮らす人間全員のものだ。」


 リリアが微笑む。


「また。」


「大きなことを言いましたね。」


「そうか?」


「はい。」


 夜。


 屋敷。


 庭。


 月を見る。


 昔。


 この場所で。


 孤独になることを決めた。


 今。


 同じ場所で。


 未来を託すことを考えている。


「……。」


 人生とは。


 本当に分からない。


 その時。


 イリスが静かに現れる。


「報告があります。」


「また世界の危機か?」


「違います。」


「……。」


「安心してください。」


「では何だ。」


 イリスは答える。


「世界管理システムが。」


「新たな記録を開始しました。」


「?」


「あなたが。」


「未来へ何を残すのか。」


「観測しています。」


「……。」


 まだ。


 終わりではないらしい。


 しかし。


 悪くない。


 未来を見るというのも。

第161話を読んでいただきありがとうございます!


今回は「アルベルトが作った場所を、次の世代が受け継ぐ」話でした。


世界を救う英雄ではなく、未来へ繋ぐ領主としてのアルベルトを描いていきます。

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