第16話 悪役らしい自己紹介
王立学院。
王国中の貴族子息、令嬢が集まる名門校。
俺はその正門の前に立っていた。
「……広いな。」
屋敷が何軒建つのか分からないほどの敷地。
噴水。
巨大な校舎。
訓練場。
魔法演習場まで見える。
「坊ちゃま。」
レオンが荷物を持ちながら口を開く。
「私はここまでとなります。」
「ああ。」
学院は基本的に護衛の同行は禁止らしい。
つまり。
ここからは一人だ。
「悪くない。」
誰にも止められない。
ここでなら好きなだけ悪役になれる。
「では。」
レオンは深く頭を下げた。
「ご武運を。」
「学院だぞ。」
戦場じゃない。
俺は一人で校舎へ向かった。
教室へ入る。
すると。
「……。」
全員がこちらを見た。
二十人ほどの生徒。
男子も女子も、いかにも貴族という雰囲気だ。
「おはようございます。」
教師が俺を見る。
「今日から編入するアルベルト・フォン・グランディア男爵です。」
教師に促され、教壇へ立つ。
ここだ。
第一印象が全て。
最初に嫌われれば、この学院生活は成功する。
「自己紹介をお願いします。」
「分かった。」
俺は教室を見回した。
「俺はアルベルト・フォン・グランディア。」
一呼吸置く。
「馴れ合うつもりはない。」
教室が静かになる。
いいぞ。
「俺に話しかけるな。」
さらに続ける。
「邪魔をしたら容赦しない。」
これだけ言えば十分だ。
最低な第一印象。
悪役そのものだ。
俺は満足して席へ向かおうとした。
その時。
「……かっこいい。」
誰かが小さく呟いた。
「え?」
「一人で全て背負う覚悟……。」
「さすが噂の男爵様……。」
「芯がある方なのね。」
「…………。」
まただ。
また始まった。
教師まで感心したように頷いている。
「皆さん。」
教師が微笑む。
「男爵様は少し不器用なお方です。」
「はい!」
なんで納得してるんだ。
「席はこちらです。」
案内された席へ座る。
窓際、一番後ろ。
悪くない。
すると隣の席から声がした。
「初めまして。」
銀色の長い髪。
整った顔立ち。
青い瞳をした少女が微笑んでいた。
「私はリリア・エルフォードです。」
「そうか。」
「よろしくお願いします。」
「断る。」
即答した。
友達なんていらない。
悪役だからな。
しかし。
「ふふっ。」
少女は笑うだけだった。
「面白い方なんですね。」
「……。」
違う。
面白くない。
本気で断っている。
俺は窓の外を見た。
学院でも駄目なのか。
悪役への道は、まだまだ遠そうだった。
第16話を読んでいただきありがとうございます!
いよいよ学院編がスタートしました!
そして新ヒロインも登場です。
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