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第159話 悪役なら新時代を見届ける

 王都。


 新時代記念式典。


 数年前なら。


 俺がここに立つことになるとは。


 絶対に思わなかった。


「……。」


 会場を見る。


 各国の代表。


 若い世代。


 そして。


 かつて敵だった者たち。


 今では。


 同じ未来を見るために集まっている。


「アルベルト。」


 レオンハルトが隣に立つ。


「まだ信じられない顔をしているな。」


「何が。」


「この光景だ。」


「……。」


 否定できない。


「昔。」


 レオンハルトは笑う。


「お前は世界がどうなろうと関係ないという顔をしていた。」


「……。」


「それが今では。」


「世界の未来について話している。」


「変なものだな。」


「……。」


 確かに。


 人生は。


 思った通りにはならない。


 式典が始まる。


 国王が壇上へ。


「本日。」


「我々は新しい時代の始まりを祝う。」


「人間。」


「魔族。」


「全ての種族が。」


「共に歩む時代を。」


 拍手。


 そして。


「最後に。」


「この時代の始まりに大きく関わった人物へ。」


 嫌な予感。


「アルベルト・フォン・グランディア。」


「……。」


 やはり。


 名前を呼ばれる。


 壇上へ向かう。


 昔なら。


 絶対に嫌だった場所。


 今は。


 知っている顔がある。


 だから。


 歩ける。


「アルベルト。」


 国王が言う。


「何か言葉を。」


「……。」


 考える。


 英雄らしい言葉。


 そんなものは。


 自分には似合わない。


 だから。


「俺から言うことは少ない。」


 会場が静まる。


「この世界を変えたのは。」


「俺一人ではない。」


「……。」


「争いをやめた人。」


「新しい関係を作った人。」


「知らない相手と話すことを選んだ人。」


「全員だ。」


 会場を見る。


「未来は。」


「誰か一人が作るものじゃない。」


「そこにいる全員が。」


「少しずつ作っていくものだ。」


 沈黙。


 そして。


 拍手。


 今までで。


 一番大きな拍手だった。


「……。」


 席へ戻る。


 リリアが笑う。


「立派でしたよ。」


「そうか。」


「はい。」


「でも。」


「少し緊張していましたね。」


「……。」


 否定しない。


 夜。


 王都の庭園。


 空を見る。


「終わったか。」


 セレナが来る。


「はい。」


「長い旅でしたね。」


「……。」


 転生した日。


 悪役になると決めた。


 そこから。


 世界を救い。


 新しい時代を見ることになった。


「アルベルト様。」


「これから。」


「何をするんですか?」


「……。」


 答えは。


 もう決まっている。


「帰る。」


「グランディア領へ。」


 リリアが笑う。


「やっぱり。」


「そこが一番落ち着きますか。」


「ああ。」


 俺の居場所。


 それは。


 世界の中心ではない。


 小さな領地。


 仲間がいる場所。


 静かに暮らせる場所。


 馬車へ乗る。


 帰路につく。


 しかし。


 その途中。


 空に一瞬。


 不思議な光が見えた。


「……。」


 イリスが反応する。


「未知反応。」


「またか。」


 全員が見る。


 だが。


 イリスは続ける。


「違います。」


「危険ではありません。」


「……。」


「これは。」


「祝福です。」


「?」


 空に浮かぶ文字。


『世界記録完了』


『物語保存開始』


「……。」


 俺は空を見る。


「物語。」


「大げさだな。」


 でも。


 少しだけ。


 悪くないと思った。

第159話を読んでいただきありがとうございます!


新時代記念式典で、アルベルトが「英雄」ではなく「未来へ繋ぐ一人の存在」として語る回でした。


世界を変えたのは一人ではなく、多くの人の選択だったという、この物語の答えを描いています。


次回、物語はいよいよ最終話へ向けた最後の日常へ進みます。

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