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第157話 悪役なら新しい時代を見る

 数年後。


 グランディア領。


 朝。


「……。」


 窓の外を見る。


 以前とは。


 少し違う景色。


 街は広がった。


 交流学校は大きくなった。


 人間。


 魔族。


 獣人。


 様々な種族が。


 同じ場所で暮らしている。


「男爵様。」


 リリアが声をかける。


「また昔のような顔をしています。」


「どんな顔だ。」


「世界が変わったことを。」


「まだ信じられない顔です。」


「……。」


 否定できない。


 あの日から。


 世界は少しずつ変わった。


 でも。


 俺自身は。


 あまり変わっていない気がする。


「アルベルト様。」


 セレナが資料を持ってくる。


「今年の交流学校の卒業生です。」


「……。」


 見る。


 人間の生徒。


 魔族の生徒。


 一緒に卒業する。


「最初の頃。」


 セレナが言う。


「反対する人も多かったですね。」


「ああ。」


「でも。」


「今では。」


「当たり前になっています。」


「……。」


 当たり前。


 その言葉が。


 一番嬉しい気がした。


 特別なことではなくなる。


 争わないこと。


 一緒にいること。


 それが普通になる。


「男爵様。」


 リリアが笑う。


「嬉しそうですね。」


「そうか?」


「はい。」


「また顔に出ています。」


「……。」


 午後。


 街の広場。


 新しい記念碑が建てられていた。


「これは何だ。」


 聞く。


 領民が答える。


「交流都市記念碑です。」


「皆で作りました。」


「……。」


 近づく。


 そこには。


 一つの文章。


『違いを恐れず、共に歩む』


「……。」


 名前はない。


 俺の名前も。


 英雄の文字も。


「これでいい。」


 リリアが聞く。


「名前がなくてもですか?」


「ああ。」


「誰か一人の功績にするものじゃない。」


「……。」


「続いていくなら。」


「それでいい。」


 その夜。


 屋敷。


 古い部屋。


 転生した時の記録を見る。


『悪役として生きる』


 最初の目標。


 今では。


 笑ってしまう。


「……。」


 もし。


 あの日。


 違う選択をしていたら。


 この未来はなかった。


 でも。


 人生は。


 選択の積み重ねだ。


 その時。


 扉が開く。


「アルベルト。」


 リリア。


「また勝手に入るな。」


「いつものことです。」


「……。」


 昔なら。


 怒っていた。


 今は。


 慣れた。


「明日。」


「交流学校の式典があります。」


「分かった。」


「参加してくれるんですね。」


「ああ。」


 リリアが微笑む。


「珍しい。」


「何が。」


「昔なら。」


「絶対に断っていました。」


「……。」


 確かに。


 でも。


 今は。


 見る価値があると思う。


 自分が残したものではなく。


 次の世代が作るものを。


「アルベルト様。」


「はい。」


「この世界。」


「好きですか?」


「……。」


 少し考える。


 昔なら。


 答えられなかった。


 でも。


「好きだ。」


 自然に出た。


 リリアは笑った。


 そして。


 翌日。


 新しい時代の始まりを見るため。


 俺は式典へ向かった。

第157話を読んでいただきありがとうございます!


最終章「未来へ残すもの編」が始まりました。


アルベルト自身ではなく、彼が作った環境の中で育った次の世代を描く章になります。


物語の始まりでは「嫌われる悪役」を目指していた彼が、今では新しい時代の土台を作った存在になっています。

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