第153話 悪役なら未来へ残すものを考える
王都。
国王からの招待。
今回は。
ただの式典ではなかった。
「……。」
俺は会議室を見る。
国王。
各国の代表。
そして。
若い貴族たち。
「何の集まりだ。」
国王が笑う。
「未来の話だ。」
「……。」
嫌な予感。
「アルベルト。」
「お前には。」
「次の世代へ残すものを決めてほしい。」
「……。」
意味が分からない。
「なぜ俺が。」
国王は即答する。
「最も向いているからだ。」
「違う。」
「?」
「俺は。」
「そういうものを考える人間ではない。」
昔なら。
ここで断っていた。
しかし。
国王は首を振る。
「昔のお前なら。」
「そう言っただろうな。」
「……。」
「だが。」
「今のお前は違う。」
沈黙。
会議室に資料が並ぶ。
教育。
交流。
制度。
未来への計画。
「……。」
確かに。
必要なものだ。
俺がいなくなった後も。
続くもの。
「アルベルト様。」
セレナが言う。
「これは。」
「男爵様が作ったものを守るためではありません。」
「……。」
「次の人たちが。」
「自分たちで作れるようにするためです。」
その言葉。
少し考える。
俺が求めていたもの。
最初は。
誰にも邪魔されない生活。
でも。
今。
守りたいのは。
自分だけの場所ではない。
「……。」
「なら。」
「仕組みを作る。」
全員が見る。
「一人の英雄に頼る世界は。」
「弱い。」
「……。」
「俺がいなくても。」
「人間も。」
「魔族も。」
「自分たちで話し合える場所を残す。」
国王が微笑む。
「それが。」
「お前の答えか。」
「ああ。」
会議後。
王城の廊下。
「男爵様。」
リリアが言う。
「大きなことをしましたね。」
「違う。」
「?」
「始めただけだ。」
セレナが笑う。
「それを。」
「皆さんは大きな一歩と言うんですよ。」
「……。」
帰りの馬車。
窓の外を見る。
昔。
悪役になるために。
人との距離を取った。
今。
人との繋がりが。
未来を作っている。
グランディア領。
屋敷へ戻る。
庭。
いつもの場所。
机の上に。
一冊の新しい本。
「何だ。」
リリアが答える。
「領地の記録です。」
「これから起きたことを。」
「後世に残すために。」
「……。」
開く。
最初のページ。
『グランディア領の変化』
『アルベルト・フォン・グランディア』
名前を見る。
「……。」
少し違和感。
英雄。
救世主。
そんな言葉。
自分には似合わない。
しかし。
最後の一文。
『多くの人々が共に暮らせる場所を作った領主』
「……。」
これは。
悪くない。
その夜。
庭で空を見る。
「悪役として始めた人生が。」
「こんな終わり方になるとはな。」
誰もいないと思って呟く。
しかし。
「聞こえていますよ。」
「……。」
リリア。
「いつからいた。」
「最初からです。」
「……。」
ため息。
でも。
少し笑った。
第153話を読んでいただきありがとうございます!
アルベルトが「自分が何を成し遂げるか」ではなく、「自分がいなくなった後も続くもの」を考える回でした。
悪役として孤独を選ぼうとしていた彼が、最後には未来へ繋ぐ側になっています。
次回、十一章の締めに向けて、アルベルトが最初に暮らした屋敷で過去を振り返ります。




