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第152話 悪役なら自分の居場所を認める

グランディア領。


 世界交流会が終わった翌日。


 街は。


 いつもの日常へ戻っていた。


「……。」


 静かだ。


 昨日まで。


 世界中から人が集まっていたとは思えない。


 店。


 学校。


 住宅。


 全てが普通に動いている。


「男爵様。」


 リリアが紅茶を置く。


「今日は予定ありませんよ。」


「……。」


 珍しい。


 本当に。


 何もない。


「なら。」


「休めますね。」


「……。」


 椅子に座る。


 庭を見る。


 昔。


 この場所で考えていた。


 どうすれば悪役らしくなれるか。


 どうすれば嫌われるか。


 今思えば。


 随分変なことを考えていた。


「男爵様。」


「何だ。」


「後悔していますか?」


「?」


「この人生になったこと。」


 少し考える。


 転生した時。


 望んでいたもの。


 静かな生活。


 誰にも邪魔されない時間。


 それだけだった。


 でも。


 手に入ったものは。


 想像とは違った。


「……。」


「していない。」


 リリアが微笑む。


「珍しいですね。」


「何が。」


「迷わず答えたことです。」


「……。」


 確かに。


 昔なら。


 もっと考えていた。


 しかし。


 今は分かる。


「最初の目的とは。」


「違った。」


「でも。」


「悪くなかった。」


 リリアは嬉しそうに笑う。


「はい。」


 そこへ。


「アルベルト。」


 レオンハルト。


「またか。」


「今日は報告だ。」


「何の。」


 魔王は一枚の書類を出す。


「人間と魔族の合同騎士団。」


「正式設立が決まった。」


「……。」


 少し驚く。


「早いな。」


「お前が作った流れだ。」


「違う。」


「?」


「作ったのは。」


「そこにいる全員だ。」


 レオンハルトは笑う。


「本当に変わったな。」


「何が。」


「昔なら。」


「全部自分の手柄にしていた。」


「……。」


 否定できない。


 その日の夕方。


 街を歩く。


 子供たちが遊んでいる。


 人間。


 魔族。


 関係なく。


「アルベルト様!」


 一人の子供が駆けてくる。


「これ。」


 渡されたもの。


 木で作った小さな剣。


「男爵様の剣です!」


「……。」


「強そうでしょう?」


「……。」


 少し見る。


 不格好。


 でも。


 丁寧に作られている。


「ありがとう。」


 自然に言葉が出た。


 子供が笑う。


 その夜。


 屋敷。


 机の上。


 古い日記。


 転生した直後に書いたもの。


『悪役として生きる』


『嫌われる』


『孤独になる』


 読み返す。


「……。」


 今の自分とは。


 正反対だ。


 紙を閉じる。


「まあ。」


「これはこれでいい。」


 窓の外。


 街の明かり。


 守りたいもの。


 帰る場所。


 それがある。


 十分だった。


 その時。


 扉が開く。


「男爵様。」


「何だ。」


 リリアが少し困った顔。


「王都から。」


「また招待状です。」


「……。」


 俺は空を見る。


「平和になっても。」


「面倒事は減らないな。」


 リリアは笑う。


「でも。」


「行きますよね?」


「……。」


 少し間。


「必要なら。」


 昔とは違う答え。


 俺は。


 もう逃げるだけの悪役ではなかった。

第152話を読んでいただきありがとうございます!


アルベルトが、自分自身の変化を受け入れる回でした。


「悪役になる」という最初の目的から始まった人生が、いつの間にか多くの人に必要とされるものへ変わっていきました。


次回、物語の終盤へ向けてアルベルトが最後に残すものについて描いていきます。

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